りっく

時代屋の女房のりっくのレビュー・感想・評価

時代屋の女房(1983年製作の映画)
3.7
まるで野良猫のようにフラりと現れ時代屋に居座り、そしてまたフラりと二、三日姿をくらませ何食わぬ顔で戻ってくる夏目雅子と、そんな彼女に幻惑されながらも帰りを待ってしまうダメ男・渡瀬恒彦の関係性がいい。特に次々に衣装も変え、そして初対面の渡瀬と何のためらいもなくヤッてデキてしまう大胆不敵さと、何の反省もなく歩道橋を渡って帰ってくる肝っ玉のデカさ。それでも美人だからオールオッケーと許してしまいたくなるような、このフワフワとした存在は夏目雅子以外であれば成立しなかっただろう。

夏目雅子に一人二役をやらせたのはよく分からないし、夏目雅子が姿をくらまして久しぶりに戻ってくるからこそ、彼女の無邪気で何の悪気もない笑顔が効いてくるのであって、その点だけは明らかにミスキャストだと思うが、大林宜彦が松竹で撮った「異人たちの夏」と同質の不思議な人情っ気がクセになる、温かくもの寂しくどこか郷愁を感じさせる一本。
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