映画とはこんなにも抽象的でアーティスティックで良かったんだと思い出させてくれた作品。
観終わった後、複数枚の絵画の連作を眺めていたような感覚。
誰かの、限りなく空想に近い現実か、あるいは限りなく現実に近い空想を観ていたような感覚。
主人公が出てきて事件が起き解決し主人公がこう変わりました、という筋ではなく、ある一人の人生とその周りで起きたいくつかの出来事を傍観している。そこまでの経緯は分からない。そしてその先も分からない。出てくる人全員の行く末を知るのが人生ではない。それは自分も含む。
終わり所ではっとさせられる。
岩井俊二監督の暖かく幻想的なカットの数々と苦悩するヴァンパイアと恋する自殺志願者の全てが美しかった。