ちろる

ヴァンパイアのちろるのレビュー・感想・評価

ヴァンパイア(2011年製作の映画)
3.6
木漏れ日の中でサイモンとレディバードが静かな森で彷徨うシーン、母親が白い風船に囲まれてピアノを奏でるシーン、マリアが窓辺でダンスするシーンなどはとても詩的で、いかにも岩井俊二らしい、幻想的な映像表現が光る作品だった。

私は岩井俊二監督好きだしヴァンパイア映画も嫌いではないが、実は前半のサイモンか血を求めながら愛を持たずに生きている姿は、なんだか「中二病」の香りがして耐えきれず挫折するかと思った。
ただ途中のレディバードとサイモンがヒルの毒を吸う、若干エロティシズムを感じさせるシーンから、徐々にラブストーリーとしての輪郭が見え始め、その儚げに惹かれ合う2人の存在は羨ましいほど純粋で美しかったので気がつけば前のめりで画面に吸い付いていた。

登場人物の皆が「死の予感」を漂わせてに生きる中で、唯一異色なエネルギー放っていたレイチェル リー クック演じるローラの狂気が、静かな流れの中に刺激を与えてくれて中々楽しませてもらったし、他にも単調な中でたまにゾッとするパンチを入れてくるので結局は飽きずに最後まで観ることができた。

何にしろ登場人物の女の子が皆驚くほど可愛い。唯一の日本人役の蒼井優も神秘的に光っていたけど、
北欧系?なレディバードや、パシフィック系のジェリーフィッシュやバレエダンサーのマリアなど、皆童顔な可愛らしい女優さんばかり起用していたので、見事に岩井俊二のロリコン癖も見え隠れしてしまって面白かった。

破滅的で、少し奇妙な岩井監督らしいシークエンスは個人的に嫌いではないけれど、「現代の孤独なヴァンパイア」として美しく祀り上げるような描き方は正直あまり好きではない。
退廃的で、儚い魂を描くのは構わないけど、きれいごとではなくそこに伴う深い絶望も共にしっかりと描いて欲しいと勝手ながら感じてしまった。
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