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パリ20区、僕たちのクラスの白のレビュー・感想・評価

パリ20区、僕たちのクラス(2008年製作の映画)
4.5
人種のるつぼ、パリ20区。フランスで育まれた自由、民主主義の精神は教育現場にもあれど、現実に直面すればそれらの全肯定はし難いと分かる。教育現場はそうした現代の問題、誤謬を表面化する。
自由の概念とシステムによる支配との狭間で精神は逼迫し、押し寄せるグローバリズムが更に人間の心を波立たせる。フランソワが国語教師として仏語を教えるのはそういった問題の背景を示唆するための映画的役割がある。
生徒や教師としてシステムに括られる以前に、皆個人であるという前提がある。しかしシステム的な”安定”や”秩序”の志向性故に誰もそこを顧みる余地を持たない。そこに葛藤があれど、「このままでいいのか」という反語はいづれ妥協へと堕してしまう。
物語では自己表現を通してクラスの向上が図られるが、結果的には成功か、教師の自己満足に終わったのか分からない。しかしこれが現代教育の現実であり、先進国に生きる人間が下す妥協点だ。
商業映画のようにセンチメンタルを煽ったりドヤ顔エンドに帰着することなく、この映画は問題を問題として呈示する。教育現場とは社会の縮図でもあり、映画のリアリティは現代社会を敷衍する。ドラマとしての緊張感を観る者が覚えてしまうのは、私たちの生がそこに地続きだからだろう。
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