アンダーシャフト

バロンのアンダーシャフトのレビュー・感想・評価

バロン(1989年製作の映画)
4.3
自分的にテリー▪ギリアムと言えば、「未来世紀ブラジル」「12モンキーズ」「バンデット▪Q」とこの作品。(制作順でないところは触らないで!)

自分としては、上記4作品のうちこれが一番のお気に入り。

内容は「ほら吹き男爵の冒険」がベースで、トルコ軍に包囲されたドイツの小さな町が舞台。
劇場で喜劇の上演中、男爵を名乗る老人が突然観客の前に表れ、この戦争の発端は自分にあると話し始める。
老人から披露されるめくるめく冒険譚。しかし劇場の外では、トルコ軍の砲撃がすぐそこまで迫っていた…ってこれ、まだまだ序盤。この後老人は、一人の少女と町を救うべく新たな冒険の旅に出る…と続きます。

そしてこの冒険が楽し過ぎる!
月に行って、火山に潜って、魚に呑まれて…と、目の回る展開に、ビックリ人間大集合とくれば、スラップスティック感満載!! 主人の命を狙って放たれた弾丸を止めようとそれを追っかけ、なんと追いつき、いざ弾をつかんだ瞬間「あぢっっ!!」って…まさしく“おもちゃ箱をひっくり返したみたい”とはこのことかと。

映像は映像で、よく作り込んであります。
当時の最新技術をふんだんに使ってるはずなのに、そこかしこに漂う手作り感。特撮と実写の融合で、こんなに美しく、スケール感があり、記憶に残る数々の映像が撮れるテリー▪ギリアムのセンスは、さすがとしか言いようがない。
“月の砂漠”を一行の船が進むシーン。漆黒に近い宇宙を背景に砂の波紋を横切って進む一隻の船。白い砂の上に船が残していく一筋の軌跡…まさに息を飲む美しさ!!
それと、ストーリーの中で何度か登場する死神! 白い石像の中からそれを食い破るように突如現れる場面は、ホント目に焼き付くインパクトがあります。
とにかく映像はファンタジーとして一級品。観る人の数だけオキニのシーンが見つかるかも。

人それぞれ面白がるツボは違って当たり前。特に、こういった話の筋も支離滅裂で癖のある映画なら、「つまんない」「くだらない」が普通にあって当然。ただ、今の疲れて荒んでギスギスの世の中には、こういう突き抜けた馬鹿馬鹿しさって必要かもって思えてしまう。
世を騒がす迷惑行為で笑うより、人の不幸で笑うより、テリー▪ギリアムが広げたきらめくような大風呂敷でクスッとかニヤッとか笑う方が、自分には合ってる。賛否はどうあれ、自分は大好きな作品です。

最後に、ユマ▪サーマンの美しいヌードが拝めるありがたい作品であることを付け加えておくかな…オヤジだし。