まちゃん

キッドのまちゃんのレビュー・感想・評価

キッド(1921年製作の映画)
3.8
「ほほ笑みをさそう映画。たぶん、一粒の涙も」冒頭の字幕で宣言して物語は始まる。この作品はチャップリン初の長編作品だ。それまでの短編作品で天才的なギャグのセンスは既に周知のものになっていた。加えてストーリーテラーとしての才能も披露する。宣言通りの感情に観客の気持ちを導くその手腕は見事なものだ。お馴染みの放浪紳士チャーリーが子育てをする。貧しいながらも幸せな生活、その愛情深い2人の関係性が微笑ましい。若きチャップリンの身体能力やパントマイムは相変わらず素晴らしいが今作ではなんといってもキッド役のジャッキー・クーガンの可愛らしさに心奪われる。その演技は見事でまさに元祖天才子役だ。注目すべきはこの作品の背景の貧民街の圧倒的なリアリティだ。これはチャップリン自身の経験が反映されている為だろう。つまりキッドは子供の頃のチャップリン自身なのだ。幼きチャップリンの目に映ったロンドンの貧民街。そこの人々、感じた思い、思い描いた空想。その全てが画面に焼き付けられている。52分とコンパクトな時間でエンタメとしても良くまとまった作品なのでチャップリン映画の入門としてもおすすめ出来る作品だ。
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