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キッドのKKMXのレビュー・感想・評価

キッド(1921年製作の映画)
4.2
 チャップリン初の長編ガーエーとのこと。チャップリンが捨て子を拾い(拾いたくないけどギャグで必ず手元に戻ってくる)、その後5歳になったキッドと一緒に生活する話。『街の灯』の凄みには流石に至らぬものの、充分面白かったです。


 本作の特徴として、とにかく5歳のキッドが超絶プリティです!賢いし、よく動くし、リトルチャップリンという趣きでした。このニセ親子、キッドが投石で窓ガラスを割って、チャップリンがシラ〜っとお困りですか的な感じでガラスを売りつけるという詐欺を働いているのですが、この時のキッドのツラが極悪で最高!また、歳上のガキとのケンカでもかなり凶暴なファイトを見せておりました。ニセ親父のチャップリンも相当喧嘩達者なので(直接強いというより狡猾で敏捷なタイプ)、なかなか最強親子ですよ。

 本作のギャグもキレており、序盤の捨て子が戻ってくるコントや、ガラス屋詐欺コントは爆笑でした。しかし、白眉はやはりトリップ映像!終盤でチャップリンが夢を見て、天使になって空を飛んだり、ロリっぽい女天使に誘惑されたりと、『サニーサイド』と同じくサイケデリックでアシッドなシーンがあり、これまたストーリーの本筋と無関係なのがウケました。これ、絶対に空飛ぶトリック思いついてやってみたかっただけだろチャップリン!絶対にキマッてから撮ってますね。
 この手のドラッグ妄想トリップ映像はかなり好きですが、『街の灯』では無くなっていたので、きっとこのころにはチャップリンもラリリ映像のヤバさに気づいて足を洗ったに違いない!🤣


 面白いだけでなく、ストーリーもなかなかグッときました。印象深いのは、キッドの出自を知って保護しにくる孤児院スタッフとの闘争です。このスタッフ、とても養護の仕事をしている人間とは思えず、まるでキッドを動物のように扱って連れ去ろうとします。その時キッドもチャップリンも猛烈に抵抗するのですが、この時のテンションがやや異様というか、引っかかるものがありました。
 そのため、鑑賞後にチャップリンの出自を調べたところドンピシャ、やはりチャップリンは貧困と母親の病気のため孤児院に収容されていた経験がありました。あの感じは自身の体験が色濃く反映されているのだな、と推察しました。
 また、チャップリンの母親は精神を病んでいましたが、基本優しい人っぽく、チャップリンに自信をつけさせる教育を施していたようです。本作も、貧困の中でもチャップリンとキッドは仲良く楽しそうに生活してます。おそらく、チャップリンと母親はそんな親子関係だったのではないかと思います。もしかしたら、そんな基礎的な愛情体験があるから『街の灯』を撮ることができたのかもしれません。
(もちろん、親からの愛情体験がなければ無償の愛を与えられない、というわけでは断じてないです。虐待されて育ったホドロフスキー師匠は『エンドレス・ポエトリー』で父を赦しておりますし、余談になりますが人間には無限の可能性があると付け加えておきたいです)
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