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キッドのmazdaのレビュー・感想・評価

キッド(1921年製作の映画)
3.9
チャップリンの初長編作品。clipはいっぱいしてるわりに恥ずかしながらこれがチャップリン映画初観賞。
経済的な理由で育てられないと、他人の車の中に置き去りにされた生まれたばかりの赤ん坊。ひょんなことから通りすがりの浮浪者(チャップリン)が父親代わりに育てることになる。
今じゃ実親じゃない誰かに育てられた家族の物語なんて映画ドラマで誰でも一度は見たことあるくらい普遍化してしまったけど、このストーリーに対してコミカルに描き、なおかつ1921年の無声映画となると斬新な物語に思えるかも。

5歳の子供に窓を割らせてガラス屋として金儲けする、親としていいとは言えないかもしれないけど、彼は彼らしく息子を育てる。その2人の日常はとても愛おしく思わず笑みが溢れてしまう。実の父親じゃないのに、少年の小走りするその後ろ姿はチャップリンにそっくりで超キュート。子供は親を見て育つ。
そしてこの2人の時間が最高だったからこそ、実親の登場〜がとてもせつない。何が正解とは言えないし『八日目の蝉』みたいな話だと私は実親が可哀想だとどうしても思ってしまうのだが、結局の最善はその子が何を一番に望むかだと思う。5歳ってすごく小さいようで、大切なものをしっかりわかる歳だし、何よりチャップリンに再会した時の少年の笑顔は何にも変えられない本物の笑顔だったからなあ。複雑。

普通じゃ重くなりそうな話も、チャップリンのもつ独自の世界観によって楽しさを一番に与えるエンターテイナー力がすごい。無声映画って言葉という壁を壊して、世界中の人が楽しさを共有することができるものだと思って、これをこの時代に作ってしまったことがすごい。昔も今も映画が人に伝える在り方って変わらないなって思う。
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