あーさん

チキ・チキ・バン・バンのあーさんのレビュー・感想・評価

チキ・チキ・バン・バン(1968年製作の映画)
4.2
ミュージカル映画強化月間!
10月編 Vol.5

そこまで知名度の高くない作品だが、”チキ・チキ・バン・バン”の曲は私も小さい頃よく歌った。明るく楽しい曲で今でも空で歌えるが、確か小学校で習ったような。。
そして”メリー・ポピンズ”で素晴らしい名曲の数々を披露してくれたシャーマン兄弟が音楽担当とあらば観なくては!

”サウンド・オブ・ミュージック”や”メリー・ポピンズ”に比べると、やや馴染みのある歌が少ないと思っていたのだが…なかなかどうして!!
主題歌である名曲”チキ・チキ・バン・バン”以外も少々地味ながら名曲揃い。ストーリーも奇想天外、とても楽しめるファンタジーミュージカルだった!

メリー・ポピンズの素敵なパートナー、バートを演じたディック・ヴァン・ダイクが今回はユニークな発明家でお父さん、カラクタカス・ポッツを演じる。バートは溌剌とした青年だったが、今作では変わり者だけれど愛情たっぷりの父親を好演。
製菓会社社長令嬢トルーリー・スクランプシャス役にサリー・アン・ハウズ。この方、お美しい上になかなか歌が上手くていらっしゃる。素敵!
子ども達(ジェレミーとジェマイマ)が素朴でかわいらしい。今時の子役の、いかにも歌が上手い…!な感じではなくて(声もこれ見よがしに大きくなくてどちらかというと小さいのだけれど)、とにかく自然体で愛らしいのだ。
そして、私が密かにすごいと思ったのはおじいちゃんバンジー・ポッツ役のライオネル・ジェフリーズ。歌も力強くて男らしく、良い味出して物語を盛り上げる。
P・O・S・H、POSH!


さて、そもそも”チキ・チキ・バン・バン”とはなんぞや?

今で言うF-1の走りだろうか?1900年代初頭のヨーロッパのカーレースの場面が冒頭出てくるが、そのレースですんでの所で優勝を逃してしまった…その輝かしい歴史を持つクラシック・カーが時を経てボロボロになり、あわやスクラップにされそうになる。それを回避させようと子ども達が父親の発明家ポッツに「何とかして!」と頼むのだった。…その後あれやこれやあって、、生まれ変わったのがチキ・チキ・バン・バン。
何故そう呼ぶかは本編でどうぞ!

この作品の一番底に流れているのは、”愛” それも”親子愛”だと思う。ポッツ家は祖父+父子家庭。でも明るく愛溢れるお父さんとこれまた個性的なおじいちゃんのお陰で子ども達も明るく天真爛漫、幸せである。失敗もするけれど、どんな時も前向きなポッツのことが子ども達は大好きだし、凄いと思っている。
ポッツもどんなことをしても自分の子ども達を守って育てるんだ!と気概に溢れている。
発明家らしく家の中も面白い仕掛けだらけで、不器用だけど一生懸命子育てしている姿が本当に素晴らしい!
本来、子育てってこうあるべきだよね…って理屈じゃなくて実践しているお父さん。素敵だなぁ。。
もうね、人と比べたりとか虐待とか、そんなことしてる場合じゃないの!笑って!楽しんで!まず親がね。子どもって、宝なんだよ。面倒だとか汚いとかうるさいとか大人が、社会が、あったかい目で見なかったら、世の中がどんどん廃れていっちゃう。。1968年の作品だけれど今にも通じるそんな風刺もあるのかな、と思わされた。

好きなシーン、たくさんあるけれどやはり子守唄のシーンはしっとりとして良いな。。それからお祭会場でのポッツのバンブー・ダンスが最高!大好き!
そしてピクニックで子ども達がトルーリー嬢と歌う歌がかわいらしい!
”私達はあなたが大好き
胸の鼓動が告げている
いつまでもそばにいて”
こんな素直でかわいらしい子ども、今いるのかな。。

バルガリアに舞台が変わってからの展開は…完全におとぎ話!お城や男爵や兵隊さんまで出て来る。
男爵への贈り物があんなものだったとは…。あのダンスシーンも忘れがたい。子どもだったら絶対真似してる!
汽車とチキ・チキ・バン・バンが並走するシーンも楽しい。車や電車が好きな子どもは喜ぶだろうな。顔はついてないけれど、どことなく色合いが機関車トーマスに似ている笑

夢を乗せて走るチキ・チキ・バン・バン。すっかり私も童心に帰って楽しんだ。子どもの時に出会いたかったなぁ。。
そして好きなことをとことん追求する一本気なポッツの生き方、人間としての大きな優しさにはトルーリーでなくても惚れてしまう!

予定調和だけれど、無理やりでなく納得のラスト。うん、後味も良し!

ただ、一つだけ難を言うと…
子どもが観るには143分はちょっとばかり長いのかな〜と。そして眠い時に観ると大人もコロッといっちゃうかも。
何せ intermission(休憩)があったので。。(2回に分けるとか工夫して是非トライしてみてほしい…)

でも、とてもほっこりと懐かしい気持ちにさせてくれる作品なので、小さいお子さんのいるファミリーにも、もちろんこれからファミリーになる方にも、また自分が幼い頃の事を思い出しながら観るのもとてもお奨め。。

こういう夢とか愛のある作品をもっともっとたくさんの人に観てほしいな、と思う今日この頃。
まず、大人が自分自身を信じて幸せだと思えなければ。。
あーさん

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