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ルルドの泉での4423のレビュー・感想・評価

ルルドの泉で(2009年製作の映画)
4.0
要約すると聖地ルルドにて奇蹟が起きてクリスティーヌが立った! という話だが、奇蹟が起きるまでの道のりが長く、そこまでの過程と奇蹟にすがる人間の醜態をていねいに織り込んでいく作風である。

さほど信仰心もなく、また巡礼初参加のクリスティーヌになぜ〝奇蹟〟が起きたのか――。

監督のジェシカ・ハウスナーはあのハネケへ師事をしたひとらしい。なるほど、ハネケ特有の毒が受け継がれているような、一種の居心地の悪さがあった。

ゆったりとしたカメラワークに赤や青がぱりっと映える色調が印象的だが、おそろしいほどに静謐で、なおかつ画面構成に一寸の狂いも感じられない規則性のある作品である。その美しさのなかに羨望や嫉妬といった感情がじわじわとあぶりだされていく。ありとあらゆる人間の悪意が、そこにはあるだけだ。

どうしてあのひとばかりが注目されるのか。夢を見るなと笑われて、でもあきらめきれなくて。なんで? どうして? わたしはこんなに苦しんでいるというのに!

わたしも悪意を吐き出し続けている人間に変わりはないので、奇蹟を目の当たりにしてしまった人々の、むき出しにされた悪意にものすごく安堵と好感を覚えてしまった。ああ、本来人間とはこういう生き物であったと。

なぜその者だけがもてはやされ、絶賛されるのか――それがそのひとの人生だからである。絵にしろ小説にしろ、才能のある・なしがある。才能のない者はだれも見向きもしない場所で、だれにも知られることなくただ這いつくばるしかないのだ。なぜなら、それが〝おまえ〟の人生だからである。
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