「奇蹟」を願う人たちの深層心理を静かなタッチで描いた良作。
フランス南西部に実在するカトリック信者の聖地「ルルドの泉」。
ここから溢れ出す水を飲んだり、身体に塗ると病が治癒すると言い伝えられ、信者以外にも多くの観光客が訪れている。
肢体に麻痺の障がいを持つ主人公クリスティーヌは、同じく車椅子の人たち、病院関係者の人たちと共に恒例の聖地巡礼ツアーで「ルルドの泉」を訪れる。
熱心な信者をよそにクリスティーヌの身体に変化が表れる。周りの人たちは「奇蹟が起きた」と口々に祝福するが・・・
日常において起こりがちなこと。
熱心に信仰しているのに状況が好転しない、それどころか真逆のことが起こる(例えば、御参りした帰りに事故に遭う、教会が襲撃される…とか)
反対に信仰の無い人に奇跡が起きたり、幸福が訪れたり。
それらの出来事を実際に目の当たりにした時、人はこう思うかもしれない。
「不公平だ」
「奇跡」と「奇蹟」の違い。どちらも理屈では説明出来ない現象を指す言葉だけど、後者は神の力が介在する。
宗教の信者は得てして「奇跡」も「奇蹟」と信じたがる。それは今までの信仰が身を結んだ、報われた、と「行為の代償」としての結果を期待してしまうから。「神は公平である」と盲信しているから。
ハウスナー監督は人が持つ自己都合主義的な思考の危うさを女性らしく、優しく、そして鋭く暴いている。
淡々と進む映画が苦にならない人にはオススメです。