hajime363

ファミリー・ツリーのhajime363のレビュー・感想・評価

ファミリー・ツリー(2011年製作の映画)
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「家庭を鑑みなかった男性が最愛の妻を失ってから人間的に成長しがち」
アレクサンダーペイン監督あるある。
娘が“バカ”(←愛をこめて)を好きになったり、アバウトシュミットに近い設定がありましたが、テーマとかモチーフは毛色が違うので、どちらにも独自の良さがあります。

邦題:ファミリツリー、原題:THE DESCENDANTS(子孫たち)ということで舞台はハワイ、不労所得の親戚が大勢出てきます。
オワフ島ホノルルに住む弁護士のマット・キング(ジョージクルーニー)は2つのトラブルを抱えており。1つは先祖から受け継いだ土地の信託期限が7年後に切れること。もう1つは妻がモーターボートで事故を起こし昏睡状態であること。加えて、妻の昏睡に付随して発生するのが、仕事に集中するあまり面倒を見てこなかった娘2人(10歳、17歳)の面倒、そして物語の中心となる妻の不倫発覚。
(書いてて思いましたが、これらのトラブルを段取り付けて徐々に解決していく主人公スペック高い。さすが弁護士。)

◆本音と建前
アバウトシュミットにも共通していたように思うのが本音と建前(及び、大人と子供のコミュニケーション)
印象的だったのは不倫発覚後にマットが昏睡状態の妻に対して、怒りをぶつける場面。
子どもたちを病室から遠ざけて怒鳴り散らす、昏睡状態だからこそ本音が言える皮肉。“大人”は思っていることがあっても直接的な表現は避けるし、子供の前では良き父親を演じなければならない(と、思っている)。
一方で対照的なのは長女のボーイフレンドであるシド。認知症気味の老婆に対して、配慮無い態度をとって殴られるような“素直”な性格の彼だが、マットは彼との対話を通じて娘たちとの接し方を学んでいく。
自分に“素直(かつ、スマート)”になるということは、どういうことなのか…難しいです。
素直かつ“スマート”という表現で言葉を付け加えたのは、マットとシドの対話の中でスマートという単語が出てくることと、妻の不倫相手に対する対応に悩んだ結果(周囲は金玉に釘バットとかアドバイスする)のマットの対応がこの上なく“スマート”だったからです。

先祖から受け継いだ土地を指差して『ここでキャンプがしたい』という10歳の末娘に対し、無言で苦笑いだったジョージクルーニーの演技(からのラスト)、たまらんです。

蛇足
“retarded”を“バカ”と訳していて違和感。差別的な単語だから丸めて表現したのだと思うのですが、逆に悪口っぽくなっているというか、元のニュアンスが伝わらない気がしました。
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