メーヌ・オセアンの作品情報・感想・評価

メーヌ・オセアン1985年製作の映画)

MAINE OCEAN

製作国:

上映時間:135分

ジャンル:

4.1

あらすじ

ナント行きの特別列車に乗り込んだブラジル人ダンサーのデジャニラ。彼女は検札係のリュシアンに罰金を命じられるが、その理由がわからない。リュシアンは検札長と懸命な説明を試みる。だが、デジャニラはフランス語を解さず、埒が明かない。そこへ通りかかった女性弁護士は、ポルトガル語の通訳を買って出て、リュシアンたちを非難し始める。弁護士は、デジャニラを誘ってアンジェで降りる。漁師のプチガを弁護するためだ。裁判…

ナント行きの特別列車に乗り込んだブラジル人ダンサーのデジャニラ。彼女は検札係のリュシアンに罰金を命じられるが、その理由がわからない。リュシアンは検札長と懸命な説明を試みる。だが、デジャニラはフランス語を解さず、埒が明かない。そこへ通りかかった女性弁護士は、ポルトガル語の通訳を買って出て、リュシアンたちを非難し始める。弁護士は、デジャニラを誘ってアンジェで降りる。漁師のプチガを弁護するためだ。裁判は敗訴となり、ふたりはプチガの住むユー島へ向かう。そして、リュシアンたちがヴァカンスを過ごそうと向かったのもユー島だった…。

「メーヌ・オセアン」に投稿された感想・評価

netfilms

netfilmsの感想・評価

4.7
 パリのモンパルナス駅、ブラジル人ダンサーのデジャニラ(ロザ=マリア・ゴメス)は改札口を駆け抜けると、フランス西部の街ナント行きの列車である「メーヌ・オセアン号」に乗り込む。食堂車でコーラを呑み、一息ついた女は指定席のある2号車へ向かう。疲れて眠りについた数分後、検察係のリュシアン・ポントワゾ(ルイス・レゴ)に突然起こされる。「切符を拝見します」デジャニラは切符を見せるが、リュシアンはパンチがないことを彼女に詰め寄る。上司のル・ガレック(ベルナール・メネズ)に指示を仰ぎ、国鉄の検札長である彼は威厳を持ってデジャニラに注意するが、フランス語がわからない彼女には何が何やらさっぱりわからない。彼女はブラジルからこの地に来たダンサーであり、美しい流れ者である。ブルターニュ出身で厳格なルールにうるさいル・ガレックはまるで彼女を犯罪者のように扱うが、その姿を見た1号車の客ミミ(リディア・フェルド)が止めに入る。彼女はフランス人ながら、ポルトガル語も話すバイリンガルであり、立場の弱いデジャニラの通訳として、頭の固い検札長であるル・ガレックと向き合う。法曹服を着て威圧するミミに根を上げたのか、ル・ガレックとリュリュは罰金の支払いだけを命じ、それ以上の追求を折れる。ナントよりも遥かに手前であるアンジェで降りたデジャニラとミミは、迎えに来ていた漁師プチガの弁護に訪れる。

 パリ・モンパルナスからアンジェへ。血の気の多い漁師であるプチガ・マルセル(イヴ・アフォンソ)のシトロエンに乗り込んだ2人は「ランデヴーへ行こう」というミミの言葉を頼りに、まずはプチガの裁判に挑む。敵側が圧倒的に有利な状況の中で、ミミは突然裁判長に言葉の大切さを説くが、彼女の長話に呆気に取られた裁判長は執行猶予付きの禁錮18日という非情な裁定を下す。この場面がコミュニケーションの不可能性を暗喩しているのは云うまでもない。導入部分でまったく噛み合わなかったデジャニラやミミのポルトガル語と、ル・ガレックとリュリュのフランス語、ありのままの真実を伝えようとするが、早口な西訛りの言葉が裁判長の心象を悪くしてしまうプチガの漁師言葉。それらコミュニケーション手段の根本的な断絶は、極めて現代的な問題を呼び起こす。あっさりと敗訴し、怒り心頭のプチガはデジャニラとミミを自らの故郷であるユー島へ案内すると誘う。フランス西部ヴァンデ県沖の大西洋上にある島で、ポール・ジョワンヴィルとポール・ド・ラ・ムールに挟まれた港町は2人のランデヴーにとって格好の土地になるが、2人はレ・サーブル=ドロンヌへ向かうと言い残し、もう一度列車に乗る。そこで2人はリュシアン・ポントワゾ通称リュリュと奇跡のような再会を果たす。

 今作を最も特徴付けているのは、一体誰が主人公なのかまったくわからない物語展開に他ならない。当初はデジャニラとミミのどちらかが主人公に違いないと予想した我々観客の期待はあっさりと裏切られる。『アデュー・フィリピーヌ』や『オルエットの方へ』と同様に、4人の主役なのか脇役なのかはっきりしない人物たちは、それぞれが意図せぬ理由でユー島へ向かう。彼らをその島へ導くのはデジャニラの美貌の魅力に他ならない。半ばリュリュの口車に乗せられたル・ガレックは別として、ポルトガル語を操ること以外、一切の詳細が不明のデジャニラの不思議な魅力に絆され、一行は風光明媚なユー島を訪ねる。デジャニラの虜になったこの島に住むプチガは、言葉の通じない彼女に屈辱を負わせた国鉄の検札係をボコボコにしようと息巻いている。次の瞬間、プチガのBARに彼が半殺しにしようとしているリュリュとル・ガレックが姿を現す。島の仲間たちが見ている手前、引くに引けなくなった男の激情は、リュリュに怪我を負わせる事態になるが、殴り合いの果てに3人の男には友情が芽生える。メキシコ系の詐欺師のようなインチキ興行主であるペドロ・マコーラ(ペドロ・アルメンダリス・Jr)を加え、デジャニラを中心としたピープル・ツリーが市民会館で奏でるセッションの有無を言わせぬ素晴らしさ。ここではコミュニケーションの不可能性は音楽を媒介とし崩壊し、赤ワインに呑まれた憎まれる側と憎む側はセッションを通じて一つになる。

 美しきランデヴー(ヴァカンス)のその後を描いたクライマックスまで辿り着く過程で、我々観客はようやく今作の主人公をスクリーンの中に見つける。列車から飛行機へ、飛行機から船へ。船を乗り継いだ先に待つ主人公のロング・ショットの途方もない素晴らしさはまさに奇跡のような魅力を誇る。「現代のモーリス・シュヴァリエ」と煽てられ、随分あっさりと現実に引き戻される主人公の描写と対比的に描かれた遥か彼方へ消えゆくジェット機の未来。1年365日夢の中のようなデジャニラの日常に対し、一度そんな夢のような未来を夢想した主人公の運命はいとも簡単に打ち砕かれる。所詮は夢のような誘いに騙されたこと自体が、主人公にとっては限りあるヴァカンスなのである。『アデュー・フィリピーヌ』や『オルエットの方へ』と同様に、ここでも主人公の夢のような時間は有限であり、唐突に夢は醒め、永遠の現実に引き戻されてゆく。
この映画どうやったんやろう?って一晩考えてたけどまったく収集がつかん。
今まで出会ったことのないような変わった人間とお喋りした帰り道、の感覚とかに近いんかな。
でもおれ側が完全に心開かれへんかったってのもちょっとあった。
まだまだ囚われてるなあ、そういう人にずっと憧れてきたはずやのに。

220席?あるシネマブルースタジオで客は5人ぐらいやってんけどみんな笑うとこは一緒でスカスカの室内でも妙な一体感があったのが良かった。
メーヌオセアン号の赤い座席、それと対比した青のセーターで現れるリディア・フェルドが良い。ラストの浜辺のロケーションも良い。あざといほど乗り物が出てくる。
いや〜ロジエめっちゃ自由。

切符の穴あけをせずに列車に乗ったブラジル人女性に、国鉄の検札係が罰金を求める。偶然居合わせた弁護士が彼女をかばう…そこから誰も予想がつかない展開に。舞台は陸海空と縦横無尽に移り変わる。

関わりのない人達が集まったり分散したり、ジャムセッションのよう。まさにフリースタイル。

『オルエットの方へ』で女子達にバカにされる上司を演じたベルナール・メネズが、また酷い目に合わせられていた。

延々とかわいそうな姿を映し出されると、笑っていいのか悪いのか、じわじわ笑いが込み上げてくる。鈍臭いキャラは愛嬌があるけど、そこまでフィーチャーする理由がわからなくてそこもまた笑える。

楽曲数が少ないながらも音楽のもたらす印象が強い。ロジエ、本当にセンスがいいな。
大越

大越の感想・評価

4.6
僕は小津よりもロジェの方が好きだ。
R・シュトラウスが「あいつは何でも音楽にしてしまう」と言われたように、ジャック・ロジェの手にかかると、どんなことでも映画になってしまうようだ。

知らぬ同士がお皿叩いてサンバを踊る 笑
この映画に明確な主人公はいないが、主役が次々に代わって行くところが面白い。
最後、検札クンはメーヌ・オセアン号に間に合ったのかな?
楽しい〜!私もそこにいたいな、人生って面白いなと思える映画。ブラジル音楽のサントラもすごくいい。手作り感満載のダンス会とラストの船の乗り継ぎ、このふたつのシークエンスは神がかり的に面白かった。映画館の暗闇でニコニコしっぱなしでした(^ ^)
ポルトガル語・英語・フランス語、訛りや漁師言葉も入り混じって話は当然一筋縄には進まない。それでもテキトーに折り合いをつけちゃう適応力は大陸的だし、移民の多い国ならではの寛容さがあって憧れます。セラヴィ、ケセラセラ♪みたいな。

なかなか示唆に富む話だけどユーモアがあふれている。ロジエ監督素敵。異文化間交流なんてシンプルなことなんだよ、と言ってるんですねきっと。日本にいるとそういう機会が少ないから新鮮な感覚だし見習いたいと思う。あ、でも全然堅苦しくないですよ。ダラダラで楽しい。最高大好き!
cinefils

cinefilsの感想・評価

4.0
ストーリーの真実らしさという点から見ればメチャクチャな映画だけど、見ていて幸福になる。公民館でのダンスシーンはとにかく素晴らしい。

『オルエットの方へ』にも出ていたベルナール・メネズ、ここでもひどい目にあっているが、見ていて同情する気がまったく起こらないのはある種の人徳であろう。
0y0

0y0の感想・評価

5.0
マーティン・スコセッシのアフター・アワーズ、サフディ兄弟のグッドタイムに近い。映画における偶発性、物語から解放された映画を玉突き事故的にスライドさせながら進行させるジャック・ロジエの変態的手捌き。あとこの映画を観ればクリント・イーストウッドという映画監督が15時17分パリ行きという怪作で何を行ったのかという理解の助けになると思う。
CHEBUNBUN

CHEBUNBUNの感想・評価

4.5
【最強gdgdバカンス映画】
『ハン・ソロ』でモヤモヤした頭を冷やしに、北千住ブルースタジオへ!

最強バカンス映画の巨匠ジャック・ロジエ監督作『メーヌ・オセアン』に癒されに来た。本作は、新人の鬼才を讃えるジャン・ヴィゴ賞を彼が60歳にして受賞した作品だ。

この前観た『アデュー・フィリピーヌ』『オルエットの方へ』と比べると、珍しい!《ドラマ》があった!

リヨン駅から黒人女性が待て待て〜と列車を追いかける。そして、席に着き落ち着いたかと思うと2人の検札員が現れ、バトルが勃発する。フランスでは、改札が廃止されており、切符は必ず打刻する必要がある。その文化を知らず、また急いで乗ったので打刻を忘れた彼女。しかし、気が強いもんだから検札員に食ってかかる。そんな彼女の前にポルトガル語が話せる女性弁護士が現れ、検札員を見事撃退。そして意気投合し、弁護士のクライアントがいるユー島を目指す。もっ物語があるではないか!

しかも、ジャック・ロジエは60歳にして、高度な新技を披露。弁護士、黒人女性、検札員、船乗りが、ある一箇所に集まってくるのだ。このアンサンブルが爆笑且つ感動を覚える程に綺麗だ。

『オルエットの方へ』で振り回される上司を演じたベルナール・メネズはまたしても女に振り回される。今度は男にさえ振り回される。テキトーで変人だらけの空間、gdgd過ぎるのにとてつもなく面白い。すっかり私はジャック・ロジエのファンになりました。

また、個人的なエピソードであるが、本作は1980年代のアンジェ駅が観られる。そう、私が大学時代留学していた時によく行った場所だ。今のキオスクがある場所に、チケット販売所がある。また、1980年代のアンジェ駅の建物はこじんまりとしている。地下通路は外にあったのだが、後に駅舎が拡張され、地下通路は駅舎内に位置するようになったことが分かる。まるで、『三丁目の夕日』の上野駅を観るようなノスタルジーに包まれました。

ジャック・ロジエの『トルチュ島の遭難者 』や『フィフィ・マルタンガル』、『Le Perroquet bleu 』も観たくなってきました。
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