映画に詳しくたって、たくさん観てたって、
普段の生活で役立つことなんてあまりない。
得をすることも、家族に尊敬されることも。
日曜日に、以前映画館で観ていて、
クライマックス前に、息子が怖がって、
最後まで観られなかった
（インクレディブル・ファミリー）を
また息子と2人で観る。
今度は、息子は最後まで楽しんで観ていた。
『面白いね。この間最後まで観られたね。』
とあっさり息子が言うから、
んだよ！と、僕は激しく仰け反る。
月曜日にWOWOWで（ホーム・アローン）
がやっていて、パート1を妻と観る。
妻はホーム・アローンを全く知らない
らしい。信じ難いが、どんな話なのかも
知らないらしい。どんなにコメディ映画
だよ、ファミリー映画だよと説明しても
『あの2人に殺されるじゃん！』と
言っていて、いやいや、サスペンス映画
じゃないから！と言っても、怖い怖いと
ブツブツ言っている。
知らないって、偉大だ。
ここのシーンは重要だから覚えておいてね、
とか、このお爺ちゃん、顔覚えてとか、
このセリフは大事だから、とか、
補足しながら、僕らは観る。
説明不要なこの作品を説明している
自分に少し笑えてくる。
結局、笑って泣いて満足した様子の妻は
確信めいた顔でポツリと言う。
『面白いね。こりゃヒットするね。』
『ヒットしたんだよ。大ヒットだよ。
たぶん世界中の人たちが知ってるよ。』
と吹き出しながら僕は言う。
映画に詳しくたって、たくさん観てたって、
普段の生活で役立つことなんてあまりない。
だけど、愉快な瞬間に立ち会うことは
稀にある。
