pippo

悪い男のpippoのネタバレレビュー・内容・結末

悪い男(2001年製作の映画)
1.3

このレビューはネタバレを含みます

どこまでも男目線の胸糞映画
ここまで人生無茶苦茶にされた相手に惚れる? は? それでラストはあーなる? は? って感じ。
恋は理屈じゃないんだよ、お前女をわかってねぇなー、と作り手の声が聞こえてきそうだが、いやーーーないわーーー。




思うに、この監督はサディストなんだと思う。性的好奇心からお試しでソフトs&mとかそんな生易しいものじゃなく、自分はサディストだと確信していて、映画にも確信的にそれを匂わせるシーンが散りばめられる。というか、監督自身がサディなんで、そういうシーンになってしまうのではないか。
サディの視点で物事を見つめるからこういう女が成立するんだろーなと勝手に想像してしまう。
つまり、サディは相手を蹂躙し、陵辱し、征服する。そして相手はいつしか屈服し、ひれ伏し、なすすべも無く相手に人格を委ねるようになる。
しかしそれは性的嗜好の似たもの同士で暗黙の了解の元行われる役割分担の決まったゲームのようなもので、人生そのものとは別物だ。
smと同じように相手の心が変化してゆくとは思えない。

ましてやストックホルム症候群を描こうとしたわけではないことは明らかだ。
なぜなら監督が描きたかったのは愛の物語だからだ。

ところでこの監督の作品には全編殆どセリフのない男が登場する作品がいくつかあるが、なぜセリフがないのか? それは監督が映画をs○xみたいなものだと考えている(あるいは感じている)からだと思う。
行為の前、行為の最中、行為の後に何を話すか? 女を喜ばすような歯の浮くような、他人が聞いたら吹き出すような甘い言葉か、監督はそんな白々しいセリフはse○には不要、そう考えて(あるいは感じて)いるのではないか?

男にとって女の体は喩えると人参を鼻先にぶら下げられた馬のような状況で、大抵の男はなんだって言うワケですよ。
そんな嘘の混じる言葉で映画の限られた時間が空費されるのが耐えられないのではないか?
魂に触れるような作品を作りたい、是も非もない、これが人間なんだから仕方ないだろ、そういう作品を作りたいのだろうと思う。
本物の魂に言葉はついていけないから、言葉はどんどん削ぎ落とされてゆく。

そういうことだろうと思う。

だったら女の魂にも触れる作品にして欲しかった。
男目線の、いやサディスト目線の、男の創りあげた都合のいい女ではなく、魂のこもった女を描いて欲しかった。


男がガラスで刺され瀕死の重傷を負いながらも女の目をじっと見つめ、女も男の視線に囚われ、男をただ見つめ返す、あのシーンが肝なんだろうな、とは思う。
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