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白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々のsatchanのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

ドイツ映画はほとんど見たことがありませんが、ナチス政権時代のものが多いのかな。記憶に残っているのは、ドイツから疎開した家族の物語を描いた『名もなきアフリカの地で』。ドイツ国民が体験した戦争は、ユダヤ人にとってはもちろんのこと、それ以外の国民にとっても、大変な試練だったんだろうなと感じました。多くの人が粛清を恐れて、反対意見を述べず、見て見ぬ振りをして大勢に従う中、声を上げた女性がいたということは嬉しいこと。私たちの周りでも、イジメに目を向けない姿勢は存在します。殺人までしないにしても、とばっちりを受けないために、見て見ぬ振りをするのは、極めて人間的な行動。とても身近な話題であることに恐ろしさを覚えます。

洗脳されて、あるいは盲目的にナチス政権の言うがままだった人も多くいたことでしょう。映画の中では、ゾフィーの発言を真っ向から退ける判事が描かれていました。「次にここに立つのはあなたよ」というゾフィーの言葉。彼女の揺るぎない信念・信条は視聴者を魅了しますが、その後に待ち受けるギロチンという処罰を思うと、何とも言いようのない葛藤にも襲われました。ゾフィーの親だったとしたら、もっと上手に世渡りしろよ、と言ったかもしれません。自分だったら、どうするだろうか。信念は曲げられないけど、命を守りはしないだろうか、と自問自答しました。

ゾフィーのお父さんは市長を務めたことがあるような立派な人だったそうです。処刑前に面会に来たお父さん、お母さんが取り乱すことなく、別れを告げるシーンは忘れられません。ゾフィーのお兄さんも処刑されるのですから、両親にしてみれば、子どもを2人も失うことになります。それでも、ヒトラーのやり方を許せなかったのでしょうし、息子・娘の考えに共感していたのでしょうね。反対、賛成、中立、見て見ぬ振り…ドイツ国民の悲痛な思いと、様々な立場をとる人間の姿を見せつけられ、ズシンときました。
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