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スローガンのMTMYのレビュー・感想・評価

スローガン(1968年製作の映画)
4.0
‘60年代の”キャッチーな”恋愛映画。
CM監督で才能を開花させるセルジュの作品同様、この2人のストーリー自体も「あなたはすてき、私もすてき」というスローガンのもとに織られてゆく恋愛模様。
そしてこれが実際の2人の恋愛プロローグだと考えると なんだか震えます。

まるでスローガン(無駄を省いた要点)を作るかのように、
要らないものは指パッチンで消すセルジュ。

妻子持ちにもかかわらず、若い娘エヴリンも手に入れ、要らないものは”消し”、2人は時を楽しむ。
しかし次第にその
”指パッチン”ではどうあがいても消えない”現実”が見え始めたとき、
お互い思い通りにならないもの同士 歪みあい、
2人の間に溝ができ始めます。

“パッチン”で消えてくれないもの、
中年男のお腹の脂肪、離婚したいのにしてくれない妻、せっかくいい環境が整い始めたところで現れるイタリア青年、老いと若さの溝…

仕事は仕事 で割り切れ、成功をおさめてゆける反面、
私生活では ”選択肢”を複数持つことへの甘えや優柔不断性が垣間見える、男の弱さ。

老いと若さ。
たとえ総てを悟ってしまっていても、
悪あがきをしてしまう。
悪くなるとわかっていながらも衝突し、
そうして本当の別れがくる。

そうして彼らの”スローガン”が出来上がる。

「あなたはすてき、わたしもすてき」

エヴリンのことを「家庭の破壊者です。」とセルジュに紹介された知人たちの「お前は何をやっているんだ…解せん」という顔。そんなひとたちにこのスローガンを言ったところで ?? ってなるはず。

あくまでこのスローガンは、この2人の恋愛模様を表したものでもあり、2人にしか分からない特別なものかもしれない。

私からしたら、というかおそらく、鑑賞したほとんどの方からしたら、
2人に すてき というスローガンを与える意味の完璧さを感じると思います。

というか、もはや ここに出てきた登場人物、意味合いは多少違えど
みんなすてきです。
私はみんな好きです。

繰り返し出てくる 毎年のヴェニスのCM祭も、
まるでこの作品の第1章、第2章、第3章を綴るためのアクセントでした。


セルジュがカメラのレンズを覗いたら、いないはずのエヴリンが見えた。
思わず電話をかけ、彼女の声にシャッターを切る。

ほんとうに素敵な作品でした。
MTMY

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