若い時分に観たときにはそのユーモラスな語り口とウディ・アレンのシニカルな立ち振る舞いばかりを楽しむしかなかったんだけど、そこそこ生きてきて傷付けられたり傷付けられたりした時間を経てこの映画を今観てみると、神経質なちびガリユダヤ人の背中の向こうに僕もよく知っている〝愛についての感傷〟が映っているのだから、映画というのは不思議なものです。
ちくしょう、色んなこと思い出してシンミリしちゃった。
なんか俺、いまだに卵を欲しがってらぁ。
主題をドラマの中に閉じ込める旧来のロマンチックコメディから、ドラマそのものを相対化して主題と照らし合わせるこの作劇は今観ても画期的で、とても大好きだなぁと思い至りました。
それにしてもゴードン・ウィリスが捕らえたニューヨークの点描は愉しくて仕方がない!
以上、午前十時の映画祭「アニー・ホール」でござんした。