shibamike

巌窟の野獣のshibamikeのネタバレレビュー・内容・結末

巌窟の野獣(1939年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

大勢の善良な船乗りが悪党達にむざむざ殺される。悪党達に天罰を!しかし、悪事を働く悪党にも生きていて欲しいと願う人がいる。感情とはまったく複雑である。

19世紀のコーンウェル岬。沿岸警備など存在しなかった頃、船が座礁するよう仕組む盗賊一味が殺人、強奪を繰り返していた。こういう蛮行を防ぐため、現在では沿岸警備なんかが実施されるようになったと思うと、現在の安全・安心は過去の犠牲の上に成り立っており、悪党達に対する憎しみを覚える。しかし、悪党達もやむにやまれず悪事を働いているかも知れず、そうなってくると、誰が悪いのか?全員悪いのか?え、自分も?と精神が錯乱状態に陥る傾向にあるので、深入りしないが吉だ。

盗賊達のアジト名は「JAMAICA INN」。何てイカす名前だ!

この映画のキーマンである黒幕のペンガラン。こいつがとにかく極悪非道なのである。自分の手は汚さず、美味しい所取りの鬼畜。祖父からの遺伝である狂疾が発症しつつある、という設定で最後は完璧に狂ってしまう。権力者で極悪人で発狂という、人格の幕の内弁当。

そんな横暴で純メタボリックな紳士ペンガランであるが、本作の一番印象的な部分はというと、彼が執事のチャドウィックを呼ぶ際の呼び方である。これがすっ頓狂で笑わずにいられない。「チャー!↑ドウィー!↑ック!」と実に耳に残る発声なんである。家に1人でいるとき、練習したい。製作陣側でも楽しんでいたらしく、この発声はラストシーンにも使われる。あんな発声が一生耳に残る執事チャドウィック、心底同情する。

盗賊のリーダーであるジョスとその妻であるペイシャンスは元々は慎ましく暮らす善良な夫婦だったのであろう。それが、百貫デブのペンガランに何かつけこまれてしまって悪事に手を染めてしまったのであろう。にしてもペンガランに全面的に従うジョスにはちょっとガッカリ。

ヒロインのメアリーだが、何か生意気に見えてしまい、自分はあまり好きになれなかった。「今年の新入生、生意気よ。」と影で悪口を言いたくなる感じだ。メアリーのロマンス相手はトレハーンという正義漢。しかし、このトレハーンあまりグッドルッキンに見えず、トキメキ度数低めであった。知らなかったとは言え、ペンガランに長いこと手玉に取られているマヌケっぷりも影響。

全体的にサスペンス度数もそこそこあり、案外楽しめた。

チャー!↑ドウィー!↑ック!
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