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東京裁判のAのレビュー・感想・評価

東京裁判(1983年製作の映画)
3.9
長い。普段は映画を途中で中断することはないけれど、さすがに休憩を挟んで2日に分けて鑑賞。
裁判の序盤から、ブレークニー弁護人が戦争の合法性や原爆の合法性を矛盾として主張する。正義とはと考える。満州国建国を主導したとされる関東軍作戦参謀石原莞爾の、自身が戦犯として召喚されないのが不思議という発言に、責任ある者に罪を負わせる裁判の意味を考える。天皇の免責問題も然り。ほとんどモヤモヤしっぱなしだったが、かつての英国植民地であるインドを代表したパル判事の、アジアの歴史における欧米の行為こそ侵略とし、日本が侵略戦争を引き起こしたという前提に基づいて裁くことは間違っているとする批判は腑に落ちた。
いろいろ考えを巡らせた末、国や個人によって平和や正義は様々で、何だか太平洋戦争も各国の個々人が各々の平和と正義を各々の方法で追求した結果のように思えてきた。責任の所在についても、南京事件が「日本軍隊の組織の中に根深く育まれていた非人間性の現れ」と表現されていたように、軍部の暴走を首脳陣がコントロールできていなかったように、松岡洋右の国連総会からの退場を世論が讃えたように、一個人ではなく日本国民全体として戦争に向かう気風があり責任を負うべきであるように思えてきた。
決して明るい内容のドキュメンタリーではないけれど、ほんの少し前向きになれた気がしないでもない。東京裁判に対する個人の見解は違うだろうし、未だに世界から戦争は無くならないし、払った犠牲は大きすぎるけれど、各国が自国の利益の為に戦争を絶えず繰り返していた時代から、第二次世界大戦を経て、仮初めであれ戦争がいくばくか減ったと思えるような時代が現在まで続いているのだから。人類は歴史から何も学んでいないなんてこともないと思った。
外務大臣の重光葵の誠実な外交生活の結果として獲得した信頼が垣間見える人間臭いエピソードにグッときた。
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