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東京裁判のumihayatoのレビュー・感想・評価

東京裁判(1983年製作の映画)
5.0
「1945年ポツダム宣言後、ロンドン会議で決まった「戦争犯罪」の範囲を、宣言以前の国際法で「戦争犯罪」とされてない行為まで遡って起訴して、事後法で裁くものは近代法の大原則に背くことであり、公正を謳ったこの東京裁判は根底から法的根拠がない。」

「キッド提督の死が真珠湾攻撃による殺人罪になるならば、我々は、広島に原爆を投下した者の名を挙げることができる。
投下を計画した参謀長の名も承知している。
その国の元首の名前も承知している。
彼らは、殺人罪を意識していたか?してはいまい。
戦争自体が犯罪ではないからである。
何の罪科でいかなる証拠で戦争による殺人が違法なのか。
原爆を投下した者がいる。
この投下を計画し、その実行を命じ、これを黙認したものがいる。
その者達が裁いているのだ。
彼らも殺人者ではないか。」

外国人弁護士からもこんな動議があったことすら僕は知らなかったので、冒頭から驚いた。

その後も映画は、どちらかの正しさ正義に寄ることもなく、満州事変から終戦までの事実と裁判での争点や証言を淡々と紹介し、司法においてこの東京裁判はどうだったのか?戦争犯罪とは、戦争責任とはなにか?
果てはその後も各地で戦争を続けるアメリカの戦争責任はどうなるのか?という提起をする。
戦勝国敗戦国どちらも戦争しといて何言ってんのかとも思うが。

非常に貴重な記録映像であり
後世に残すべき、議事録の様な映画であった。

GHQによる茶番だなんだとはいっても
非人道的な戦争犯罪の数々をしておきながら、「自衛戦争だ」と繰り返した東條の言葉に、僕は「その通り」とは決して言えない
明らかに自衛の範疇を超えていたし
軍国・帝国主義、八紘一宇の下に諸国繁栄と平和を謳いながら、その実は権益の拡大といった詐欺的な侵略戦争だったと言うのが、僕の認識であり
それを認めた上で
押し付けられたとはいえ、戦争放棄の理想を、主権国家として世界で初めて採用した憲法を持つ国として、アメリカ外交的にも国の方向性にもやれることは、まだあるのではないだろうか。

そして国家による武力行使によって起きた殺人や破壊行為が
犯罪ではないこと
こんなおかしなことがあるか。
国際法における戦争の違法化は進んだにも関わらず
未だに、なにかと言い訳やねじ曲げをつけて「正義の戦争」などと言うものが黙認されている。
なぜ人間は戦争を仕方のない事として放置してしまっているのだろうか。
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