Melko

ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブのMelkoのレビュー・感想・評価

3.9
偉大なロートルプレーヤー達の、熟成された演奏。
静かに胸打つ音。
歳を重ねたからこそ、奏でることのできる音。

これもずーっと長い間見たかった作品。やっと。

キューバのイメージは、光と影。
陽気な音楽と太陽、クラシックカー、葉巻。そして、革命と世界からの断絶。
キューバ人は耐える民族だ、と劇中で誰かが言っていた。
不必要に主張はしない。でも、言うべきこと、起こすべき行動は起こす人々、という印象。
コロナでの抑え込みも優秀で、ホームドクター制度という、地域の医者が1人あたり200人の患者を随時受け持つシステムのおかげで、国民一人一人へのケアが細やかなのだという。結束力の強い民族なのだと思った。

出てくるプレーヤー達は、皆大ベテラン。
レコーディングや久しぶりの舞台を、ただ笑いながら朗らかに楽しくやるのではない、緊張感の中、お互いが出せる力を全力で出し合いぶつけ、良い作品、良い舞台にしようというプロ根性が伝わってきて、ゾクっとする。そして何より、プレーヤー達はお互いをリスペクトしている。ソロの振りも相手の名前を読んで渡す。

それぞれの人生にスポットを当てつつ、プレーヤー自身に語らせることで、間延びしていない。

陽気に聞こえる曲たちは、ちゃんと歌詞を見ていると、山が燃えてるとか、ちょっと激しめな内容も。
辛い事、苦しい事がたくさんある人生の中で、音楽が彼らとともにあり、彼らの人生を支えてきた。
だからこそ、引退しても、自分を必要としてくれる人の期待に応えようと全力で歌い、奏でる。

音楽やるなら半端な気持ちで向き合っては良いもの作れないね。
久しぶりに真面目にピアノに向かってみようかな。

最後、イブラヒムじいさんはお辞儀しながら泣いていた。何を思っていたのだろうか。
自分たちが拍手されてるのに、観客に拍手し返すプレーヤーたちも印象的。聴いてくださったお客様にも敬意を。
個人的な推しは、スコーンと抜ける声が印象的なエリアデス・オチョア。

よし!これで満を辞してアマプラでアディオスが見れる〜!
Melko

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