そーいちろー

パッションのそーいちろーのレビュー・感想・評価

パッション(1982年製作の映画)
3.5
工場のストとなかなか捗らない名画のワンシーンを再現した映画撮影。ポーランドでの革命。ポーランド出身の監督は「光(リュミエール)が足りない」という。

80年代ゴダールは映画の死を意識しながら、自己言及的に映画についての語りを続けていた。捗らない映画を常に撮っている。

00年代以降はユーゴ内戦によって、第二次世界大戦後の幻想としてのヨーロッパ連合への幻滅と、それでも失えぬ希望が作中に込められてきた。スクリーンで観られる感動はあったが、やはりフィルムで観たいね。

23年5月2日(火)にヒューマントラストシネマ渋谷で再見。

改めて観直したが、「愛と労働」に関する映画だったんだなと思った。似ても似つかわしくないようなこの二つのテーマが、非常に似通っている、という問題設定が根本にあったんだなと思った。愛と労働の類似関係は、おそらくその関係性で搾取というものにも結びついてしまう関係があることを示唆していたのではないかと。そして、この映画は物語を否定している、というよりもそもそもとして物語というものが必要にない次元で映画を製作していたんだなと思った。これは背景に私達を規定する社会情勢や権力構造がある中で、その中で交わされる「対話」の様子を映し出したものだったんだなと思った。そして光と闇の関係性も、愛と労働と同様に対比でなく対話的な関係性に基づくものであったと感じさせられた。
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