櫻イミト

キッスで殺せ!の櫻イミトのレビュー・感想・評価

キッスで殺せ!(1955年製作の映画)
4.5
「何がジェーンに起ったか?」(1962)のアルドリッチ監督による探偵マイク・ハマーシリーズの映画化。公開時にトリュフォーやシャブロルが大絶賛した作品。

私立探偵のマイク・ハマーはある夜、クリスティナという女を拾い自分の車に乗せたが、突然3人の男に襲われて意識を失う。 気が付くと病院のベッド。彼女が残した言葉「リメンバー・ミ―」とは一体何を意味するのか?その背後には驚くべき事実が隠されていた。。。

カルト化必至の衝撃作だった。ラジオから流れるナット・キング・コールに女の激しい息遣いが被るオープニングタイトル。ただならぬ気配に姿勢を正し、直後の足から足への大胆なオーバーラップに傑作を予感した。「これは”遠いところ”まで連れていかれそうだな」と思っていたら、想像の上を行く展開でさらに驚いた。

マイクの捜査の先々で飛び交う謎めいた言葉。このところ勉強している聖書が役に立ち、本作の正体に気付き始める。クリスティーナとはクリスチャンの女性型だ。キリスト信者が「私を忘れないで」と!?

本作はアニメ「エヴァンゲリオン」の先駆だ。最後まで解き明かされない暗喩の数々は衒学趣味を刺激する。その始祖と言えば聖書の黙示録である。まさかフィルム・ノワールで黙示録?と思いきや”三位一体”の単語も出てきてピースがハマっていき・・・

本当にやりやがった!と喝采を送らずにはいられないラストシーン。「リメンバー・ミー」そう、黙示録を忘れてはならないのだ。容赦ない暴力描写も含めて遥かに時代の先を行くぶっ飛んだ映画だった。

タイトルのバカっぽい印象で見くびってはならない「何がジェーンに起こったか?」も相当な代物だったし、やはりアルドリッチ監督侮りがたし。

※オープニングのナット・キング・コールの歌は本作オリジナルの「ラザー・ハブ・ザ・ブルース」。
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