私が社会人一年生の頃、サラリーマンの大先輩として山口瞳は憧れの人でした。
サントリーの宣伝部の社員だった彼は婦人画報に書いた当作品の原作「江分利満氏の優雅な生活」によって直木賞を授賞しサラリーマン世界から作家人生に転身しました。
インテリジェンスに溢れ酒やギャンブルに滅法強いサラリーマン、当然のこと彼の書いた小説やエッセイも充分魅力的だっただめです。
山口のサラリーマン体験に基づく同名小説が元の本作。
主人公の江分利満氏、この不思議で魅力的なサラリーマンが好きです。
戦争を体験し戦後の復興期を支えたサラリーマンの気持ちをガンガン台詞にして観客に突きつけて来ます。
「あっ、それ解る。あっ、こっちも解る」といちいち拾っていたらきりがない戦後日本人のサラリーマンが感じていた多くの複雑な感情。
かつて"新人類"と呼ばれた世代の私のような人間が何故理解できるのでしょう?笑
例えば「酒と奥さん以外に好きなものは?」と問われて江分利は、公園、運動会、子供と答えます。
運動会は一生懸命な所がいい、一生懸命生きてる奴は強いと答えます。
"一生懸命"、ここですね。
小林桂樹は大正12年生れで山口瞳より二歳上。
江分利満つまり山口瞳つまりは戦争体験のある戦後成長期のサラリーマン世代の代表者。
一生懸命を熱く演じている訳でもないのにそれが隣にいるように感じさせます。
こういう人達が頑張ってくれたお陰で私達の今があるのです。