Kumonohate

黒の超特急のKumonohateのレビュー・感想・評価

黒の超特急(1964年製作の映画)
4.5
東海道新幹線が開業したのと同年同月(1964年10月)に公開され、しかもテーマは当時まだ計画段階にあった山陽新幹線の用地買収にからむ汚職と土地転がしという、まさに「黒シリーズ」の真骨頂にして最終作(第11作)にして大傑作。

岡山の工業用地買収で一儲けした不動産屋(田宮二郎)が、実はその裏に新幹線の土地買収にからむ儲け話のカラクリがあったことを知り、自分も甘い汁を吸おうと上京。だが、背後に、汚職と強請と恐喝と恋愛詐欺と黒幕が浮かび上がってきたため、逆に彼らを強請ろうとする。やがて、その企みが殺人事件を引き起こしてしまい…というスリラー&サスペンス。

ストーリーは実話なんじゃないかと思うほどリアルでえげつないし、登場人物の誰もが金に執着し誰かを騙していて腹黒いという、裏「日本一シリーズ」(植木等の)としての「黒シリーズ」の面目躍如たる名作だと思う。日本が夢の超特急とオリンピックに沸き返っているこの時期に、よくもまあこんな作品を発表したものだと感心する。だが、一方で、こうした反権威反権力的スタンスを、エンタメ作でありながら堂々と標榜していることを羨ましく思う。時代のなせる業と言ってしまえばそれまでだが、やはり、世の中の趨勢である “明部” に対して常に疑問を投げかけるという姿勢は、現代でも失ってはならないのだ。

最後にもう一つ褒め言葉を付け加えるなら、「なるほど強請とはこうやるのか」と大いに勉強になるし、それを演じる加藤大介の悪党ぶりが素晴らしい。
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