もっちゃん

恐怖分子のもっちゃんのレビュー・感想・評価

恐怖分子(1986年製作の映画)
4.2
エドワード・ヤンの世界観を知るにはうってつけ。光と闇を巧みに利用し、異世界のような雰囲気を構築する。

違う場所で暮らす人間たちが奇妙な形でつながっていく。つながっていくストーリー展開だとポール・ハギスの『クラッシュ』を思い出すが、今作はそういったものとは毛色が違う。
静かにつながり、静かに歯車が動き出す。そして音を立てて崩れる。その不気味さと現実的な手触りが恐ろしくも、気持ちがよい。

始まりは読書をする女の描写である。その特異なOPはゴダールの影響を強く受けているように思わせる。
エドワード・ヤンの代表的な手法として光の使い方をよく言われる。今作も光と闇を上手く使い分ける。暗い部屋の中で人物のシルエットのみを映し、独特な世界観を作り出す。もちろん暗室などの取り入れ方も秀逸。

そして人物をしつこく撮るというよりも物にフォーカスしていく。机のペン、無造作に床に置かれた電話、窓に反射する像。登場人物の表情よりも物にフォーカスが上手くシフトしていく。それによって物がその人物を表すメタファーとして働き、身体化されていく。「物が表情を持つ」というのはこのこと。

そして作中で明らかに異質な存在として映る不良少女。彼女はつながるはずもなかった他者と他者を橋渡しする象徴的な存在として描かれる。異なる社会を軽々と飛び越える彼女は果たして天使か、悪魔か。