スタンダード

恐怖分子のスタンダードのネタバレレビュー・内容・結末

恐怖分子(1986年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

【昇進】


香川照之ときたろうを
足して2で割った風貌の主人公は、
課長になりたがっていた。


それは妻のためであると
彼は主張しますが、
果たして真実はどうなのか?


【小心】


本当に妻のためならば、
妻が自分の元を離れた時点で
課長になる価値はなくなるはず。


しかし彼は
妻が去ったにも関わらず、
課長にはなれず落胆します。


己のため課長になりたかったのか?
もしくは、
課長になれば妻が戻ると考えたのか?


【傷心】


彼は妻が去った理由を
あれやこれやと思案しますが、
どれも不正解でした。


つまり彼は、
正解が分からない状態で
モヤモヤしたまま、
自殺をしたような形になります。


【命題】


もしかすると彼は、
『課長に昇進すれば妻が戻る』
という仮定を、
証明する前から"真"であると
信じていたのか?


この仮定の証明には、
『課長に昇進する』
ことが必須条件であるため、
その必須条件が崩れた時点で
証明は不可能となります。


もしも
証明が不可能(昇進不可)になったことで
彼は自ら死を選んだのであれば、

『課長昇進=妻が戻る』

という仮定を、
彼は盲目的に信じていたことになります。


とは言え、
彼は妻(小説)のことなど実は興味なく、
昇進できなかったこと自体に
絶望した可能性もあります。


つまり彼は、
妻が去った理由を求めてはいたものの、
死を選ぶほどに深刻な問題ではない
と考えていた可能性もあるわけです。

昇進>妻


【迷宮】


もしも課長になっていれば、
妻は彼の元へ戻ったのか?
それとも戻らないのか?


もしも課長になっていれば、
妻が戻らずとも
彼は生き続けたのか?
それとも死を選んだのか?


妻を愛していたのか?
己を愛していたのか?


その真実は彼の死によって、
永久に謎のままとなってしまいました。