只々格好いい。
揺れる電灯、転げ落ちるコカ・コーラ、開け放たれた窓に映り込む清掃員、橙の電話を弄ぶ指、風、暗闇とポートレート、失神。完璧な画、完璧な運動。
「小説と現実は違う」という台詞や日本の推理小説に対する言及から浮かび上がるのは、2次元と3次元の曖昧化(妄想と『新・里見八犬伝』の看板!)。それこそ本格ミステリであれば”歪な形に収められる”設定に対して、リアルな結びつかなさを突き出す底意地の悪さ。
作中作の「季節は単調な繰り返し」という文言をラストの生と死を持って否定する鮮やかさに痺れた。円ではなく螺旋、2次元ではなく3次元。