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恐怖分子のAZのレビュー・感想・評価

恐怖分子(1986年製作の映画)
4.8
淡々と何かに感染していくような映画で、その感染速度は指数関数的に増大していくイメージ。だから序盤はすごく静かでゆっくりとした展開なのだけれど、退屈せずに見れたのは画の見せ方やリズムが独特で、今までに見たことないような物だったから。

奇抜というわけでもなく、カメラの焦点が人物の顔だけでなく、そこに置かれている物だったり、空間だったり、或いはそこではない別の空間を映し出したり、そして急にものすごく魅力的なバストアップ姿が現れたり...すごく不思議な気持ちにさせれられた。

職業柄か、古い電話機や後ろに見える椅子、何気なく使われている素敵な照明といった物にまで関心がいってしまった。

人と人は見えない何かで影響し合っている。けれど、タイトルにもあるように実は分子レベルの小さな何かが存在していて、あまりにも小さい些細なものだから気づかない。ただ無意識的には感じていて、その人の感情や行動に影響を与えている。

序盤、中盤に対して終盤の見え方が変わったように思う。急に動的になったような。特に、早朝に小学生がかけていくシーンで何かが始まる気配がしてゾクっとした。

誰かと出会い、別れ、死んでいく。この世の無常観を独自の見せ方で映し出そうとしたのだと思う。


訳も分からず見終えた後もしばらく涙が止まらなかった。

本当に傑作。
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