えびちゃん

恐怖分子のえびちゃんのレビュー・感想・評価

恐怖分子(1986年製作の映画)
4.2
エドワード・ヤン監督作品。『牯嶺街少年殺人事件』、『台北ストーリー』とここまで観て、ヤン監督のもつ質感・雰囲気・空白・闇と光の使い方がとても好きだと確信しました。たまらず2回観てしまった。
3組の男女の群像劇。綻びつつあった関係が些細ないたずらをきっかけにじわりじわりと、でも確実に崩壊への道筋をたどっていく。抜け出したくても抜け出せない焦燥感と人間の深層にある脆弱さをひしひし感じた。
湿度が高そう、なのに背筋がひんやりする感じや、割れたガラスで皮膚をすぱっと切ったときの痛みより先に衝撃が来るような、そんな雰囲気をずっと纏っている。
結末はやすやすと予想を裏切られ放心してしまった…。
あぁもう、夜半にSmoke Gets In Your Eyesを流しながら煙草をふかすのなんてかっこいいの…。ものすごくベタ。だけどものすごくいい。そしてそのまま次のシークエンスにまたがっていくのがまたたまらなくて…。
暗室に光が差し込み風にはためく引き伸ばした写真たち、銃弾で割れる花瓶、冷ややかな美しさが忘れられない。
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