"レジェンド・オブ・ミスター西部劇"であるジョン・ウェインの遺作。死期が迫ったガンマンであるブックスが、死地として選んだ下宿を中心に巻き起こる争いを描いている。
病に侵されて死を目前にしても、このまま死を迎えようとするブックスだが、これまで積み重ねてきた"業"が彼を見逃すはずは無く、名誉目当ての輩や恨みを持つ者達が次々と迫り来る。
世話になっている下宿先の母子に迷惑かけまくってるので当然ぶつかり合うが、だんだんと心を通わせあう姿は、面倒見の良い老人でしかない。でも、もしかしたら彼は優しくなったのではなく、ただ一人で生きてきて、そのまま一人で死ぬことが寂しかったのかもしれない。本当に不器用すぎて、全然うまくいってないけど。生来のものと思われる皮肉屋気質なのも原因だろう。
戦いに向かう時のブックスが、本作でもっとも心に余裕があったように見える。戦わずとも死はすぐそこまでに来ているけど、自分で決めた生き方、死に方で終わらせようと、清算しようとする彼と夫人の少ない別れの言葉は、非常に心に来るものがある。
ブックスの過去シーン、という扱いではあるが、「赤い河」、「リオ・ブラボー」といった過去の名作のシーンが冒頭に挿入されている。これがジョン・ウェイン最期の作品となったが、本作から遡って素晴らしい過去作に触れる良い機会になるだろう。
この作品で、一度西部劇は死んだのかもしれない。静寂の中で秒針のようなノイズが鳴り続ける、永遠にも感じるラストシーンを観ながら、そんな事を考えた。