このレビューはネタバレを含みます
謎の伝染病により五感が一つずつ徐々に失われていく、、、
パンデミック物ですが、派手さやエンタメ性を求めて観る人はつまらなく感じると思います。
この映画では最後まで伝染病の正体は分からないし解決もしません。人類は成す術なく最後には視覚までも失われます。
人は感覚に依存して生きています。感覚が失われるのに伴って"人"としての体を為さなくなっていきます。
でも人類は希望を持ち続けます。主人公のレストランでは嗅覚が無くなれば味を濃くし、味覚が無くなれば見た目や音で楽しませる料理を提供します。
ラスト、人類は幸福感に包まれます(視覚が失われる前兆)。この時、人は存分に生を謳歌し始めます。普段は何とも思わないことに楽しみを見出し、皆抱き合い温もりを感じ合う。
そしてついに視覚が失われます。しかし主人公たちはお互いを"感じ"合っています。
このラストシーンがとても詩的で美しく、絶望と多幸感が入り混じっていて素晴らしいです。
どうしようもない辛い状況でも人生は続いていく。人類は工夫したり楽しみを見出したり人を愛することで乗り越えていく、そういう人間賛歌のようにも感じました。