Azuという名のブシェミ夫人

レナードの朝のAzuという名のブシェミ夫人のレビュー・感想・評価

レナードの朝(1990年製作の映画)
4.8
忘れられない映画の内の一本。
ロバート・デ・ニーロとロビン・ウィリアムズの名演が光る。

嗜眠性脳炎により人間性を奪われて、起きていながらにして永い“眠り”についていたレナード。
長い歳月を経て“目覚めた”彼ら患者とその家族、病院スタッフの喜びと興奮がこちらにも伝わって思わず顔がほころぶ。
何かを取り戻すように溌剌と生きる彼らを見ていると、その後の展開があまりにも切なくて、とてもとても苦しかった。

ロビン・ウィリアムズ演じる医師は、果たしてあの時間に意味はあったのだろうか、一時的に取り戻し、また奪うことになって、逆に彼らを苦しめたのではないか?という思いに苛まれる。
再び“眠り”についた彼らが現実を認識しているかどうかも最早わかりません。
ですが、この奇跡の時間に意味を見出す必要など無いと思う。
人はなぜ生きるのか。
それに対する答えなど幾らでもあって、同時にどれが正解だなんて言え無いはず。
彼らの“目覚め”の時間だって同じこと。
なにも操られたわけではなく、彼らは彼ら自身の時間を生きた。
だから、後悔や責任感や罪悪感を感じる必要はない。
ただただ、あの時間を喜び、懐かしく思い、そして失われたことを悲しむ。
それでいいと思う。

病院の食堂でのダンスシーン。
生涯わたしの心に残ります。
無言の中に全ての愛が詰まってた。