カタパルトスープレックス

ウォーカーのカタパルトスープレックスのレビュー・感想・評価

ウォーカー(1987年製作の映画)
3.0
オフビートでパンクな作風が特徴のアレックス・コックス監督の歴史劇です。アメリカ人でニカラグアの大統領となったウィリアム・ウォーカーの実話に基づいたフィクション。クラッシュのアルバムに『サンディニスタ!』がありますが、サンディニスタもニカラグアのサンディニスタ民族解放戦線ですよね。本作にはクラッシュのジョー・ストラマーも参加しています。その辺のパンクな文脈を意識してるのでしょう。

アレックス・コックス監督は長編デビュー作の『レポマン』(1984年)からそうなのですが、単調で無機質な作風です。それが独自のオフビート感を生み出しています。話はとてもドラマティックなのに、映画ではそうは見えない『シド・アンド・ナンシー』(1986年)もそうですよね。シド・ヴィシャスというカリスマ性のある題材を使いながら、まったくそれを光らせることなく淡々と描く。今回の題材となるウィリアム・ウォーカーも同様です。

まず、自分の国を持つのが夢って頭おかしいですよね。しかも、それを実行してしまうヤバい人。それがウィリアム・ウォーカー(エド・ハリス)です。数十人の手下をひき連れて内戦状態のニカラグアを制圧。傀儡政権を樹立。さらに、自ら作ったその傀儡政権を自分で倒して自分が大統領になる。夢が叶った!しかし、独裁政権を続けるものの、反乱で失脚。まあ、こんな感じのストーリーです。しかし、アレックス・コックス監督はそれをドラマティックには描かない。オフビートな感じで淡々と進んでいく。

ウィリアム・ウォーカーのキャラクター造形もどこか無機質。魅力的な人物に描くこともできたのに、あえてそうしない。『シド・アンド・ナンシー』のシド・ヴィシャスもそうでしたよね。キャラクター造形が下手なのか、あえてそうなのか。その辺がパンクなんですかね。

そんな無機質なオフビート感が好きな人にはたまらないのでしょうが、ボクはのれませんでした。アレックス・コックス監督はジム・ジャームッシュ監督らと共に80年代のインディー映画ブームを牽引した一人ですが、ブームが去ってからはパッとした活躍をしていません。