シュトルム凸映画鑑賞記録用改め

ロスト・イン・トランスレーションのシュトルム凸映画鑑賞記録用改めのレビュー・感想・評価

3.8
記念すべき視聴チェック1000本めは、ソフィア・コッポラの「ロスト・イン・トランスレーション」である。先日「ニューヨーク・ストーリー」のオムニバスの中の一つ、「ゾイのいない生活」を観たが、あれもソフィア・コッポラが父の監督の下で、脚本を書いていた。この作品との共通点は、ホテルで家族に置き去りにされるgirlであり、ソフィア・コッポラの実体験の反映があるのかもしれない。
ロスト・イン・トランスレーション……翻訳で失われたるもの、か。
彼女は日本文化の中に身を置かされた孤独な中年映画俳優(ビル・マーレイ)と学校を出たばかりで夫の仕事に付いて来たやはり孤独な若妻(スカーレット・ヨハンソン)の交流を描く事で、コミュニケーションとディスコミュニケーションを描き出した。風変わりな日本文化への揶揄との批判はあたらない。日本文化の文脈の中では意味がある行為が、不誠実な通訳のもとで、文脈を明かされないことによる疎通の不全。そして、それは、誠実さを欠いた夫や妻とのコミュニケーションにおける断絶も同じことなのである。我々はその一見コミュニケーションに見えるディスコミュニケーションに耐えなければならない。日本文化については離日すれば済む話だが、後者の断絶は我慢以外にそこから逃げ出すすべはないのだから。いや、それとも…という選択肢をビル・マーレイとスカヨハの二人は選ばなかった。
スカヨハが若いというよりも幼いほどで、可愛いらしい。すべてにうんざりしているようなビル・マーレイの達者な演技と詰まらない冗談(笑)に、その若さながら、きちんと釣り合う演技をしている。