タマル

切腹のタマルのレビュー・感想・評価

切腹(1962年製作の映画)
5.0
未だに思うんだが、仲代達也が腕をクロスさせた状態でカニ歩きするアレ、何流の何ていう構えなんだ?
津雲の言い方を借りるなら、アレが「実戦の経験を得た剣法」なのか? 本当に?? 弱そうだけどなぁ(笑)
でも、長い傘持ってる時にはついやっちゃうんですけどね(笑)
内容はどシリアスな社会派ドラマだけど、殺陣シーンはトリッキーになるのもこの映画の見どころです。

改めて鑑賞したのですが、やっぱり面白かった。
私は「頑強な体制側に個人が抗う話」てだけで、もうかなり好きになってしまう傾向がありますが、その中ではやはり本作がトップクラスです。新たな権力の唱える「武士道」に対して、もはや力を失ってしまった遺産としての「武士道」が立ち向かっていく構造はなんとなく戦後の主体性論争を想起させられます。そういった近代文学的なテーマを表現し得る「時代劇」というジャンルの内包する多様性に、改めて魅力を感じた所存です。
あと、武士の声の張りを利用として、舞台的な会話劇映画を成立させてしまうというのも、時代劇ならではの手法で実に巧みでした。

余りにも素晴らし過ぎる大傑作。
観てない方は是非観てください。
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