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切腹のTSのレビュー・感想・評価

切腹(1962年製作の映画)
4.3
【武士道精神とは】90点
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監督:小林正樹
製作国:日本
ジャンル:時代劇
収録時間:133分
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平均スコア4.3を誇る作品はそうそう無い。期待を膨らませて見たら、期待通り途轍もなく面白い傑作でありました。武士道の脆さ、そして武士社会に対して批判的に捉えた時代劇。話はシンプルでありながらも最後まで鑑賞者を飽きさせない工夫がされています。音声も聞き取りやすく、とても50年以上前の作品と思えないくらいです。

時は1630年。江戸時代に入り争いが少なくなった世の中。そこでは生きる意味を感じずに放浪する武士、すなわち浪人が増加していた。そんな中、武士道精神に基づいて自ら切腹をしようとする輩が増えてくるのだが。。

切腹は日本独自の処刑法であり海外でもそのままseppukuという言い方をされているそうです。処刑といってもその色合いが強いのは最後に首を斬る介錯であり、半分は自決であります。自分の不始末は自分でカタをつけるという、如何にも日本人らしい考え方はこういうところからも垣間見れます。大体、海外の処刑となれば処刑される者が逃げ出せないように拘束具をつけるのが普通ですが、日本の処刑となればそうはいかない。自分に非を認めさせ、かつ自分で最後の行為を行わせるわけですから、良い意味で言うと潔いですが、悪く言うと卑怯であります。ともかく、その切腹をしたいという輩が増えてきていたため、井伊家の家老である斎藤勘解由が本当に切腹を実行させるに至るのです。

実は切腹をする人が増えてきていたというのは嘘であり、切腹を口実に屋敷の中に入り、何か食べ物を貰おうというものに過ぎなかった模様。もちろん本当に切腹をしたい輩もいたかもしれませんが、大体はあまりの空腹さについた嘘であります。なのでハナから切腹をする気がない輩がほとんどなのです。まあでも他に口実はないのか。切腹をする気がサラサラないのに運良くそこに入れても、激怒した主に斬り殺されないのかと要らぬ心配もしてしまいます。そしてついにそういうことが起こってしまいます。それが今作の内容なのです。
仲代達矢演じる主人公津雲半四郎はそういう理由できている訳ではありませんが、それほ今作を見ていけばわかってきます。程よく殺陣のシーンもあり、後半のとある人物たちの殺陣シーンは本物の真剣を使っているようです。

切腹とは何なのか、日本人が疑うことのなかった武士道精神とは何なのかということを考えさせられるとともに、それを世界的に見たらどういうものであるのかということも薄々わかってきます。我々が是としたものは、果たして非ではないのか。今作は国内よりも海外からの評価が高く、外から見た極めて異質な文化に衝撃を受けた人が多かったのかもしれません。これは見るべき作品の一つと言えましょう。
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