オープニングから三味線が加速させる語りの真髄。シンメトリーを基調としてかちっと切り取られた画は、やがて人物の心とともに傾き歪む。
何なんだ、面白すぎるだろ。武士道を謳いながら人の道は平気で踏み外し、それがさも良きことであるかのように居直る奴らに叩きつける会心の一撃。
とはいえ単純な勧善懲悪に陥ることなく悲哀をもってスマートに道理が描かれていて、一切無駄がない。クソの役にも立たない自尊心をことさら醜く(映さないという手段も含めて)映し、暴き出す演出。対する仲代達矢の慈愛と怒り、冷静と情熱の両極振り達観オーラみなぎる佇まい。
血が、屋敷が、甲冑が…物言わず語り切っている。