マヒロ

フェリーニのアマルコルドのマヒロのレビュー・感想・評価

フェリーニのアマルコルド(1974年製作の映画)
5.0
イタリアのある田舎町の一年間を、主人公の青年チッタを軸に、フェリーニ監督お得意の細かいエピソードの数珠つなぎで描いたお話。

個人的にフェリーニで一番好きな『サテリコン』に勝るとも劣らない面白さだった。
あちらは文字通りの「酒池肉林」を描いたエログロスペクタクルといった感じの強烈な一作だったけど、こちらは田舎の人々の古き良き時代の暮らしを切り取ったような牧歌的なもので、春の訪れを告げるイベントに始まり、甘酸っぱい恋やら性やらのお話に、学校で悪ガキたちがチョけるだけのエピソードがあったり、ファシズムが台頭しつつあるイタリアの不穏な空気など、盛りだくさん。

面白いなと思ったのが、主人公が恋する女性がそれなりにお年を召した女性(40超えくらい?)だったり、その同級生たちが目で追うのがかなりふくよかなおばちゃん達だったりするところで、何か根本的に日本とは女性の好みが違うんだなという気がした。この映画はフェリーニの半自伝的な映画らしいので、イタリアの国民性というよりは単純にフェリーニの好みなだけかもしれないが…。

思えば取り留めのない感じのエピソードの羅列だったり、極端に美しく描かれた町の風景やイノセントな登場人物たちなんかを見ていると、本当にフェリーニが在りし日の出来事を思い出しながら語っているかのようで、見ていて心地良かったのはそういうとこなのかなと思った。
アメリカからやってきた豪華客船を見るために、町のみんなが小さなボートに乗って海に繰り出すお話は、あまりの素朴さにホロリときてしまった。
今後一生見直したくなり続けるような気がする映画。

(2018.66)
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