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座頭市鉄火旅のcatmanのレビュー・感想・評価

座頭市鉄火旅(1967年製作の映画)
4.0
十分面白いんだけど些か物足りないカナーという印象。完成度が高く全体的によくまとまっている分、印象に残る傑出したシーンが無いと言うか。

こうしたプログラムピクチャーに理屈っぽい突っ込みは野暮だと分かってはいるけれど、幾つかの点でどうしても気になってしまう。あと1人斬ったら市の仕込み刀が折れてしまうと言う設定はあまりに漫画的と言う気がするし、超人的な感覚の持ち主である座頭市が、人に指摘されるまで自分の刀の異変に気付かないと言うのも腑に落ちない。樽に閉じ込められてゴロゴロ転がされるシーンで『バカヤロウ!俺には回る目が無ぇんだ!』って決めゼリフも、いや三半規管がおかしくなるでしょ…って思ってしまう。酒の席で市がコミカルに踊るシーンも、目が見えないのにどうやって振り付けを覚えるのよ…とか、市が寝ている間に見る夢をハッキリしたビジュアルで見せてしまうとか、この辺は本作に限った話じゃないんだけど

キャスティングは今回も振るっていて、東野英治郎は芝居がホントに味わい深くて声も良い。コメディリリーフの藤田まことも達者。藤村志保はここでも凛として美しく、安易なロマンスに流れないのがイイ。春川ますみの艶っぽさもスパイスが効いてる。俺的MVPは『あばれ凧』に続いてやっぱり遠藤太津朗で、この人の演じる悪人は下衆であれば下衆なほど魅力的。見下していた按摩が実は座頭市だと分かった瞬間にコロッと態度を変えるあたりは最高。

クライマックスになって唐突に夜に雪を降らせる演出はあざといなーと思いながらも、映像的な美しさと勝新のキレのある殺陣が相まって見事。ラストシーンで見せる黄金の光に浮かぶ座頭市のシルエットが非常に美しく印象に残る。BRAVO!
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