シズヲ

モンテ・ウォルシュのシズヲのレビュー・感想・評価

モンテ・ウォルシュ(1970年製作の映画)
4.5
緩やかに「終焉」の気配が迫る西部劇。時代の終わりを前にして劇的な展開がある訳でもなく、ただただゆっくりと過去の花形が寂れていく。そんな変化の様子が叙情的な映像、牧歌的なムードによって描かれるのが印象深い。前半は特に陽気な雰囲気が漂っていて、カウボーイのおっさん達が日々つるむ姿は愉快ですらある。だけど結局どうしようもなくなっちまう。時代/ジャンルの滅びや終わりを見つめるニューシネマ西部劇は本当に切実で良い。

白髪を生やした壮年のカウボーイを好演するリー・マーヴィンがやはり秀逸。荒くれ者めいたイメージの彼が「時代に取り残される人間」を哀愁たっぷりに演じている。西部の男だったカウボーイが止められない時代の流れを痛感する姿にはどうしても切なくなってしまう。付き合いの長い相棒(ジャック・パランス)との関係性、確かな愛があるヒロイン(ジャンヌ・モロー)とのロマンスが主人公への感情移入の要素として効果的に機能している。終盤、ベッドでヒロインの傍に寄り添う姿の痛切な愛おしさよ。終わりゆく人間が足掻くような主題歌の穏やかで儚い曲調もまた素晴らしい。

カウボーイらしい生活の場面も実に生々しくて良い。小汚なくも楽しげな食事のシーンや馬の群れを追い立てるシーンなど、当時の様相を感じさせるような描写の数々に引き込まれる。こういう日常の描写があるからこそ彼らが零落していく流れの虚しさが際立つんだよな。夜中の町で暴れ馬相手にロデオをする場面なんかも迫力抜群。我武者羅に馬と格闘し、何もかもぶち壊していく。変わっていく時勢の中、過去の人間である男に残された破れかぶれの活力。
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