Inagaquilala

ヒトラーのInagaquilalaのレビュー・感想・評価

ヒトラー(1977年製作の映画)
3.6
1977年に当時の西ドイツでつくられたアドルフ・ヒトラーのドキュメンタリーだが、印象的なのは、彼が演説やパレードをする際に、いつも多くのカメラが配置されていたということ。その状況を俯瞰した映像が、この作品では何度も現れる。彼が如何にして、民衆を、第三帝国の幻影に巻き込んでいったかを、この作品は丁寧に追っている。とくに彼が演説する姿は、時を追って何度も登場し、この天性のアジテーターの本質を突き詰めている。西ドイツでつくられたという経緯もあるだろうが、何故、自国の人間が、あの悪夢に付き合ってしまったのかも、冷静に分析している。

ヒトラーの愛人であったエヴァ・ブラウンが撮影したとされるカラーフィルム。これはヒトラーの別荘にナチスの幹部が集まった際に撮られたものだが、表舞台に現れるときのヒトラーとは異なる孤立感さえ感じさせる表情や、ゲッペルスを始めとするナチスの主要人物たちのプラベートな表情もうかがえる。そのような貴重な映像も多数収録されているドキュメンタリーだ。歴史を考察する素材としても一級品の資料となる作品だ。監督はヨアヒム・C・フェストとクリスチャン・ヘレンドェルフェル。脚本もヨアヒム・C・フェストが担当しているが、実に分析力に優れた構成となっている。
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