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水の中のナイフのKKMXのレビュー・感想・評価

水の中のナイフ(1962年製作の映画)
3.8
♪だだだだ、だだだだ、だだだだ、だだだだ、抱きしめたいなら〜

 とムーンライダーズの『水の中のナイフ』を口ずさみたくなるようなガーエー。以前述べた『鬼火』と違い、本作との関連がよくわからない。タイトルだけパクったのかな、ムーンライダーズ。


 初ポランスキー、本作は非常に鋭い作品でした。登場人物は3人、物語のほとんどは湖上のヨット内で展開されるという本作は研ぎ澄まされていて、緊迫感がありました。
 とはいえ、そこまで自分の好みのテーマではなく、まおもってところです。

 休暇をヨットで過ごすため、湖に向かうセレブ夫妻の前に、ヒッチハイカーの若い男が現れます。夫と若者ははじめから険悪なのですが、何故か夫は執拗に若者をヨットに誘い、3人でヨットに乗り込みます。
 夫はことあるごとに若者にマウントして力を誇示します。若者も負けてはおらず、しつこく歯向かいます。そんな中、若者はナイフを持ち歩いていることが判明します。「森を切り開くのに必要」と主張する若者を夫はせせら笑います。そして…というストーリー。


 とにかく、この2人の男の張り合いが非常に無意味なんですよね。マチズモを誇って競い合うみたいなバカさ加減が伝わります。若者はまだいいとして、夫は力を誇示すればするほど、小物で哀れで惨めな内面が露わになります。特に、後半ある事件が起きたときの夫の狼狽や逃げの姿勢はまさに愚か者。メッキが剥げるサマは見ものでした。
 で、妻が徐々に存在感を発揮していきます。終盤はその力関係が変化していき、その辺も観応えありました。


 ミニマルな作りで、ずっとマチズモのくだらなさを密室劇で描いた作品という印象を受けました。
 実生活でもマウントしてくるヤツらは本当に哀れで自信がねえんだなぁと俺は嘲笑って相手にしないのですが、まさに夫は俺っちにコケにされるタイプです。哀れなマウンターどもは、強く見せようとすればするほど弱い本性がバレることを知った方がいいですね。

 本作、ポーランドの内田裕也ことイエジー・スコリモフスキが脚本に名を連ねておりまして、だから男性の惨めさとくだらなさと哀れさが前面に出ているのかなぁと想像します。未成年女子性虐の常習犯だったポランスキーはむしろマチズモタイプかなぁと想像しているので、もしかしたらこのプロットはスコリモフスキの色が強いのかも。いや〜『アンナと過ごした4日間』を再鑑賞したくなった!あの作品は裕也より惨めですからね、世界一惨めですよ!
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