ポランスキー監督デビュー作を鑑賞。
プロットとしてはルネ・クレマンの『太陽がいっぱい』と重なるんだけど、こちらはもっとシンプル。けれど心理描写はもっと濃厚。
登場人物はわずか3人。倦怠期のセレブ夫婦が偶然出会った青年をヨットに招き入れるのだけれど、
湖上のヨットの中と言う閉鎖空間で淡々とじっとりと繰り広げられる三人の心の動きがとてもサスペンスフル。
何も起こらない静かな時間でさえ常に不穏な空気が付きまとい、この先何が起こるか、むしろ何が起こってもおかしくない状況に興味が途切れない。
斬新なアングルからのカメラワークや波打つ湖面や差し込む日差しと美しい映像からも目が離せなかった。更にはバックに流れるジャズが絶妙にお洒落さをも含ませていた。
男性の中に潜むある種ののプライドをはじめ、優越感や劣等感、妬みや蔑みと言った人間の深層心理にまさにグサッとナイフを差し込むような生々しさを感じた。
そして非日常なシチュエーションの中に異分子となる青年の存在を加えることで倦怠期の夫婦の心情を吐露させる演出が実にお見事!
ある意味やはり夫婦は他人、穏やかに見える湖面の下は決して澄んでいる物ではなく何かをきっかけにさざなみが立つような危うさもある。とするならば実はあの青年は存在しない幻だったのではないだろうか...
そんな風にさえ思えた。
ともあれ制作時29歳にしてなんと言う感覚をもつ監督なのだろう、、、