えくそしす島

東京ゴッドファーザーズのえくそしす島のレビュー・感想・評価

東京ゴッドファーザーズ(2003年製作の映画)
4.2
【家族とは、繋がりとは】

監督を務めた今敏の作風は、侵蝕する「現実と虚構」をテーマにした作品が多い。だが、今作は「偶然と必然」を交えた“奇跡“の群像劇。

監督:今 敏(こん さとし)
脚本:今 敏、信本敬子
原作:今 敏

あらすじ
クリスマスの夜、ゴミ捨て場に捨てられていた赤ちゃんを拾ったホームレスの3人(ギン、ハナ、ミユキ)。赤ちゃんに「清子」と名付け、3 人は清子の親を探し始めることになるのだが…。

独特な世界観と難解さを持つ、今敏“らしさ"は薄めだが、その代わりに

「笑って、泣いて、ほっこりする」

万人が楽しめる質の高いエンタメ作品となっている。

しかし、こんなにとんとん拍子に色々なものが重なり合うなんてあり得ないと思う人もいるだろうし、ご都合主義が過ぎると冷めてしまう人も多いだろう。

それでも、この作品の娯楽性の裏に隠されたメッセージが、やさーしく自分の琴線に触れ、更にテンポの良さと勢いが相まってぐいぐいと引き込まれていった。

私は「映画」を観て涙を流した事が未だにない。感動することはあっても不思議と涙は流れない。
そんなサイボーグだと思われている自分でも人知れず目を潤ませた時は勿論ある。だって人間だもの。

その数少ない内の一つが、46歳の若さで亡くなった

「今敏の遺書」だ。

死に向き合いながら、立場や現状、主観と客観、そして筆舌に尽くしがたいであろう感情と想いを抑え込み、此処まで理路整然とわかりやすく「自分の感性」で語った遺書は稀だ。
不特定多数の人達にも向けた「最後の作品」でもあるのだろう。

有名なので知っている方も多いと思うが、知らなければ一読する事を強く勧める。何かしら…響く部分があるはずだ。

遺書の一部抜粋
「あんなに上手く偶然や必然が隙間なくはまった様が現実にあるとは信じられないくらいだ。「東京ゴッドファーザーズ」じゃあるまいし」

色褪せることがない監督の作品がもっと観たかった。

何年経とうとも
そう思い続けている