こたつむり

東京ゴッドファーザーズのこたつむりのレビュー・感想・評価

東京ゴッドファーザーズ(2003年製作の映画)
4.0
★ 奇縁、宿縁、腐れ縁
  縁(えにし)が繋がる奇跡の物語

年の瀬の雰囲気を感じる作品でした。
多忙だし、寒風が身に沁みるし、どこに出掛けても人が多いし。そんなワチャワチャした空気感をアニメで再現しているのです。

これがね、見事な限りで。
どこまでコンピュータの力を借りているのか分かりませんが、ちょうど良い密度の絵柄なのですよ。緻密すぎると人工的に感じるし、大雑把だと地に足がつきません。

また、登場人物たちの表情も良いのです。
正直なところ、美人も美男子も出てきませんが、観ているだけで楽しい人たちばかりなのです。特にオカマの《ハナ》さんは内面からにじみ出る美しさに圧倒されるほど。

人それぞれに違う歴史がある。
そんな当たり前のことが伝わって来ますからね。まさしく作品全体が「生きている」のです。今監督の想いが魂を与えたのでしょう。

だから、物語も素晴らしく。
聖夜の夜に棄てられた子どもと、それを偶然に見つけた三人のホームレス。このめぐり逢いが転がり転がっていく展開は、しんしんと積もる雪を溶かすほどに温かく。自然と口角が上がりましたよ。

だから、皮肉屋の僕でも、これを「ご都合主義」と呼びたくないのです。出来ることならば《ハナ》さんを見倣って「神様の思し召し」と言いたいところですね。

まあ、そんなわけで。
年末のこの時期に鑑賞するのが一番良い作品。
巡りまわる縁に感謝し、鑑賞後に僕の中に流れた音楽…その曲の歌詞を転載して今回は終わりたいと思います。あ、手抜きではありませんよ。念のため。


雪が降る町 作詞・奥田民生

だから嫌いだよ こんな日に出かけるの
人がやたら歩いてて 用もないのに

今年は久しぶり 田舎に帰るから
彼女になんかみやげでも どんなもんかな

人もけしきも 忙しそうに 年末だから ああ

僕らの町に 今年も雪が降る
見慣れた町に 白い雪が つもるつもる

あと何日かで今年も終わるから
たまには二人で じゃま者なしで
少し話して のんびりして
こたつむり

こたつむり