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東京ゴッドファーザーズのmanamiのレビュー・感想・評価

東京ゴッドファーザーズ(2003年製作の映画)
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「東京」の雑多な街並みに溶け込むオープニングのクレジットが楽しい。「ゴッドファーザー」の仕掛けがなんとも上手い。さすが今敏監督。
開始から10分たたないうちに、ホームレス三人の現状や各々の性格を簡潔に見せてくれて、すんなり入っていける。その一方で、きよこを巡る物語が進むにつれ、三人の違った面を次々とあぶり出していく奥深さもある。
『ねほりんぱほりん』で宝くじ高額当選者がテーマの回があって。確か「宝くじを当てるためにしてることは?」って質問に、出演してた高額当選者さんが「徳を積むこと」って答えてた。例えば駐輪場で他人の自転車が倒れてたら、それを起こすとか。徳を積むよう心がけて日々生活してるらしい。
今作のキャラクター達を動かしているのも、そんな「徳」の概念なのかと思う。親切や優しさとも違う。母性本能もあるけどそれだけでは語れない。生まれながらの素質にそれなりの精神的鍛錬が重ねられて生まれる「徳」、周りにも影響を与えていく力を持つ。
いつも以上に忙しなくなる年末の東京、人々はこんなにお人好しじゃない?でも見慣れた街にこんなにも雪が降り積もっているという見慣れない景色もあいまって、きよこなら奇跡が起きてもおかしくないような気がしてくる。
ようやく迎えた新しい年。おっさんも、おっさんのおばさんも、家出少女も、きよこ達も、みんな幸せになってほしいと願わずにはいられない。あ、あとタクシー運転手さんも!
同じ監督の『パーフェクト・ブルー』や『パプリカ』とは比べものにならないほど分かりやすく見やすい。そして今作鑑賞で、『千年女優』もますます観たくなった!

35
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