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さすらいのカウボーイのnetfilmsのレビュー・感想・評価

さすらいのカウボーイ(1971年製作の映画)
3.8
 妻と娘を捨てて旅立ったハリー(ピーター・フォンダ)は、7年間の放浪の果てに、仲間と西海岸には行かず家に戻ることを決意する。だが、7年ぶりに再会した妻(バーナ・ブルーム)は戸惑いを見せる。『イージー・ライダー』のピーター・フォンダがバイクから馬に乗り換え、西部劇に果敢に挑戦した初監督作。ピーター・フォンダとウォーレン・オーツという70年代のいぶし銀の2大スターの共演作ながら、製作当時はまともに上映してくれる映画館もなく、長らく幻の1本と言われていた作品である。普通はこの2人の共演と聞いた時点でピーター・フォンダが正義でウォーレン・オーツが悪という対比で物語は進んでいくと予想するだろうが、実際は違う。2人は流れ者同士の親友関係であり、常に互いの気持ちを思いやる2人の友情が物語の核になっている。今作が最も特徴的なのは、女性を主軸に据えた西部劇であるという点に尽きる。

 正義と悪、流れ者と保安官、土地を守る者と奪う者のような西部劇に最も必要とされる明確な対立構造がこの映画にはない。ひょっとしたら、派手な撃ち合いを期待した人には思いっきり肩透かしを食らうかもしれない。家に戻ることを決意した主人公が7年ぶりに妻に会うことで、ウォーレン・オーツとの友情とバーナ・ブルームへの愛情の板挟みに遭い、主人公は苦しみ、大いに葛藤する。その葛藤こそが物語を動かす原動力になっている。7年ぶりに自らの家に帰ったピーター・フォンダを迎え入れる時の、バーナ・ブルームの殺伐とした表情があまりにも素晴らしい。7年という残酷な月日が、愛する夫を前にしてもどれ程冷淡なものであるのか?彼女は表情だけでしっかりと表現している。その時の表情とは対照的に、ウォーレン・オーツが西海岸へと向かったことで、ようやく2人きりになり、7年ぶりに2人が結ばれるシーンの彼女の少女のような瞳が実に美しく、本編で最も輝く場面でもある。夕焼けの美しさ、湖面の煌びやかな輝き、風車の上から撮られた平原の美しさ、それらを実に丁寧に、ある意味3人の役者と同じくらいの熱量で丁寧に掬い上げたことが
この映画の味わいを忘れられないものにしている。それはまさに「楽園」と呼ぶに相応しいものである。
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