ドント

トカレフのドントのレビュー・感想・評価

トカレフ(1994年製作の映画)
4.2
1994年。いやぁ……いいものを観た……。「トカレフ」はロシア産の(粗雑なコピー品も多い)拳銃のこと。どことなく鬱屈した生活を送る男と、平和な家庭を営む男。彼らの関わる悲劇とその復讐劇。
説明、というか背景をゴリゴリ削っているが、これ観たらそんなもんは要らんやろ?と言わんばかりの映像と演技の説得力に満ち満ちている。間違いなく日本でありながら決定的に日本ではないように見える、あるいは匂いの違う風景の切り取り方と色味。そこに潜んでいるのは何らかの感情ではなく、ただただ破滅への予感と虚無感である。
ファーストカットからしてフェティッシュでビリビリきてしまうし、暗く悲しくも湿り気のないドラマの前半、わざと間延びさせるような後半、急転直下の終盤とどこもかしこもウ、ウゥーンと唸っちゃうようなすごさしかない。ある意味乱暴で、まったく丁寧ではないので人を選ぶ作品だが、決して珍味ではない。いいものを観たなぁ。
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